本章では、顧客勘定PDCAサイクルの実践に当たり、どのように取り組んでいけばよいか、その実践方法をお伝えします。ビジネスの状況を4つのステージに分類しました(図42)。
それではステージ別に、話を進めていきましょう。
「ステージ1」
ステージ1は、顧客の「デモグラフィック・プロフィール」「購入金額」「購入した商品」については、ある程度理解できている状況にいる企業が対象です。
このステージでは、恐らく次のような課題を持っているのではないでしょうか?
- 全顧客の属性情報や購入に関する情報を取ることができておらず、一部の顧客の情報にとどまっている
- どの顧客に、どんな情報をどのようなタイミングで提案すればよいのか、いまひとつよく分かっていない
まず顧客の「経済的な価値」を可視化してみましょう。どれだけ少数の顧客で、多くの売り上げ、経済的価値が創出されているか。事実を確認することから始めます。すべての顧客ではなく、まずは見えている顧客からで構いません。
STEP1:前年度、本年度の顧客をユニークユーザー単位で1客単価の高い順にソート
STEP2:その際、前年度、本年度の購入実績のある顧客=AUU数を把握
STEP3:1客単価のソート表を上位から10分割する(→ デシル分析の実施、図43)
STEP4:8割の売り上げが顧客のどのラインで構成されているかを把握する
STEP5:8割の売り上げを占める上位客と、それ以外の顧客のボーダーラインを把握し、ボーダーラインの1客単価を把握
STEP6:そのボーダーラインの1客単価(前年度もしくは本年度)を絶対値として、上位とそれ以外の顧客を分ける境界線を設定する。この際、顧客を何種類に分割するか決めておく(S、A、B、Cなど)
STEP7:前年度と本年度で「移動分析表」を作成する
ユニークユーザー単位で以下の仕分けを行う(図44)。
- 同じランクへの移動:ランク維持
- 上位ランクへの移動:ランクアップ
- 下位ランクへの移動:ランクダウン
- 前年度売り上げあり→本年度売り上げなし:離反
- 前年度売り上げなし→本年度売り上げあり:新規獲得
なお新規獲得には、これまで一度も購入実績のなかった「純新規」と、過去に購入実績のある「復活」の双方を含んでいます。
STEP8:移動分析表で各ランクの人数、売上合計金額、およびその差分を算出
STEP9:ランクダウン、および離反で、前年度からどのくらいの金額が減少したか、その絶対額と、前年度の売り上げを分母にして比率を算出
いかがでしょうか。どのくらい少数の顧客で売り上げの大半が構成されているか。また離反やランクダウンによって、どのくらいの売り上げが喪失しているか。イメージがつくと思います。
もし、サンプルデータが少ない場合には、それが企業にとっての顧客の代表性を持つ、優位なサンプルデータになるかという懸念もあるかと思いますが、少なくとも上位に位置している顧客は維持すべき顧客ですので、ぜひこの段階から維持・育成・獲得に取り組んでみてください。
全体の集計ができた場合は、当選確実顧客数帳票、マラソン帳票も作成して、同時に運用してみることもお薦めです。
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