防音設備の製造・販売を主な事業とするピアリビング(福岡県宗像市)。もともとは建築施工を展開していた同社は、2003年頃から防音の独自商品の取り扱いを開始。床に敷く防音マットや、吸音材を何層にも重ねた商品、空気の層を含んだ防音カーテンといった商品を開発、販売する他、オーダーメードで壁や窓へはめ込む形の防音材なども提供している。ここ5年間の売上高が17年度の4億円から、5億円 → 5億円 → 8億円、そして21年度は10億円と、着実に業績を伸ばしている。

 コロナ禍で在宅時間が増えたことから、「周囲の騒音が気になる」、あるいは「ご近所に迷惑をかけないように防音対策をしたい」というニーズが急速に高まっている。20年4月~21年3月の電話問い合わせ件数は5580件に達し、1250件だった前年同期の約4.5倍と急増した。この問い合わせ増にパンクすることなく対応できているのは、上得意客を分析した結果、相談対応を強化してきたためだ。

法人にも個人にもリピーターがいることを発見

 「17年に私がコンサルタントとして参画した当時は『当社にはリピーターはあまりいない』という認識だった。だが、顧客の過去の購入履歴を細かく見ていったところ、実は法人にも個人にも決して少なくない規模のリピーターがいることが見えてきた」と語るのは、取締役として同社の経営に参画している逸見光次郎氏(CaTラボ代表)。それまで、新規顧客の獲得こそビジネスの要と考えて施策を打ってきたが、実際には維持、育成すべき既存顧客が存在したのだ。

 そこで次のステップとして、顧客が何をどれくらい購入しているか、どんなニーズで購入しているかを調査した。それまでは、生活音や子供の声が響くといった悩みに対する防音ニーズが多いのではないかとイメージしていたが、調査の結果、購入者には音楽をやっている人が多いというデータが出てきた。ピアノの先生や、趣味で楽器をやっている人、ドラムセットを自宅に置いている人などが相当数いたのだ。

 こうした顧客の実像は、顧客からの相談内容を分析することで浮かび上がった。

 「どんな商品を買っている顧客、どんな行動をしている顧客が特に大切なのかを見ることが重要」「過去の顧客の行動や発言ログを見れば『今、誰に声をかければよいか』が分かる」と逸見氏は言う。

顧客接点のスタートは「相談」

 ピアリビングの業務フローは、受注ではなく「相談」から始まる。故に過去の相談内容のログをデータベース化し、顧客からの問い合わせに即時対応できるように取り組んでいる。過去に何度か問い合わせをしてきた顧客に、その内容を踏まえた対応ができることが、リピーターを増やすための必須事項だ。

 顧客からの電話に対し、「○○様、前回は△△のお問い合わせをいただきありがとうございます」「先日は□□をお買い上げいただき誠にありがとうございました。その後、□□の調子はいかがですか?」という対応ができれば合格点だ。

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