デジタルマーケティングに関わっている方であれば、グーグル・アナリティクスなどアクセス解析ツールのレポートに目を通されているでしょう。では、ページビュー(PV)やセッション数などの数字から、何か施策、企画を思いついたことはあるでしょうか?
PVなどの数字は交通量と似たところがあります。全体の把握には有用ですが、施策立案にはなかなかつながりません。アクセス解析や、広告測定ツールなどからアウトプットされる数値を、私は「結果系の集合知」と呼んでいます。その数字だけでは、前回より何が良くて増えたのか、何が悪くて減ったのか、よく分かりません。そのため、勘や経験、競合の真似、上司の思いつきで企画が立ち上がり、失敗する例が後を絶ちません。
とはいえ、ユーザー・顧客全員の行動を観察することは不可能です。セッション数やコンバージョンまでかかった時間などのパターンから、代表的なユーザーを選んで、その行動(個票)を見る必要があります。
例えば少々値段の高い腕時計を購入した3人の行動を観察するとしましょう(図30)。
- 顧客A:検索エンジンで商品名を検索、ギフトランキングを参照しラッピングオプションを選択、購入
- 顧客B:クーポンDMきっかけで来訪。クーポン対象商品をブックマーク。複数の商品から腕時計を選択、購入
- 顧客C:腕時計の商品ページをブックマーク。どの腕時計にするかを検討した結果、ボーナス一括払いで購入
Aさんはギフト用で、どこで買うか迷いながら購入。Bさんは自分用にクーポンを使っ て何を買おうか検討した結果、腕時計を購入。Cさんも自分用で、ここで腕時計を買うことは決めていて、どの腕時計を買おうか検討して購入しています。購入履歴だけでは3人は同じ腕時計を購入した人ですが、検討行動からユーザー心理を推察することで、状況が浮き彫りになります。このように購入の背景や心理を踏まえた施策を打つのが状況ターゲティングです。
買わなかった人は無視
行動観察では「成功者を見る」、つまり何らかのコンバージョン(CV)をしたユーザーの行動を見てください。CVしていないユーザーのデータは見ない、無視します。
買わなかったユーザーのデータを見て理由を探りたくなりますが、そこには落とし穴があります。もちろん、ECサイト側に不備や問題点があって買わなかった可能性はありますが、ボリューム的には「特に理由なくそのときは購入しなかった」というデータが圧倒的多数を占めます。自身の行動を振り返っても、ECサイトを閲覧していて、購入完了に至らない商品の方が断然多いでしょう。買わなかった理由を問われても、答えようがないケースが多いのではないでしょうか。無関心を深堀りしても解にはたどり着きません。
その点、成功者=購入者の行動の中には、すんなり購入できた顧客の他、苦労の末にやっと買えたという、想定外の行動も見えてきます。それがネックになって購入を断念したユーザーもいたことでしょう。これこそが改善ポイントです(図31)。
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