店舗勘定、ジャンル勘定、売り場勘定、施策別勘定…
売上高と利益は、他にもさまざまな観点で分解することができます。例えば多店舗展開している小売業なら「店舗勘定」。本店、支店A、支店Bなど、各店舗の売上高と利益の合計は全社の売り上げ&利益とイコールになるはずです。
「ジャンル勘定」という分け方もあるでしょう。百貨店なら、婦人服、婦人雑貨、紳士服、子供服、インテリア、趣味雑貨、食品など、各ジャンルの売上高、利益の合計も全社の数字と一致します。もっと細かい単位では、「売り場勘定」もあるでしょう。各売り場それぞれの売り上げ&利益を算出し、その合計で考える手法です。
切り口を変えると「施策別勘定」という考え方もあると思います。これは通常の定価販売なのか、バーゲンによる販売なのか、催事なのか、外販なのか、さまざまな施策の切り口から売上高と利益を見ていくやり方です。
私の経験上、このように売上高、利益を分解しきれている企業はそう多くないようです。企業全体としての売り上げ&利益は管理していても、それがどのような構成要素で出来上がっているかまでは可視化できていません。これではどこに利益の源泉があり、どこに課題があるのか、把握が難しくなります。
可視化できない理由はどこにあるのでしょう? 売上高や人件費、家賃など、積み上げることができる数字については、多くの企業が把握しています。ただ広告宣伝費や消耗品費など、売り上げに正比例しているのかよく分からない変動費や、共有部分の減価償却費など、どのように案分してよいか分からない経費をどうするかが社内的に決まっていないことが、可視化のボトルネックになっているようです。
やや乱暴な言い方になりますが、分かる範囲でまずはやってみる、案分が困難な費目についてはルールを決めてやってみるのもありだと思います。売り上げ&利益を商品の観点だけでなく、顧客から、その他さまざまな観点から分解してみることで、どこに成果、課題があるのかが多面的に見えてきます。多面的に見える化することが、打ち手の多様化を促進し、目標達成に向けた道筋がつくことになるのです。
「悩んだらお客さまに聞け」の意味
ビジネスでは業種業界を問わず、顧客と商品を知り尽くすことが成長に欠かせません。「悩んだらお客さまに聞け」という言葉があります。ユーザー・顧客が口にしたことのみならず、その購入実績や行動から、顧客自身が気づいていないことも含めて企業側が気づくことが重要です。
ユーザーが検討段階でどのような行動を取ったか、実際にどんな商品をいつ、いくらで何回購入したか、店舗についてどんな情報を発信したか……私はすべての情報を知りたいと思っています。知ることによって、ユーザー・顧客に対応できること、提案できることが増えると確信しているからです。ユーザー・顧客を見える化することで、打ち手の量が増え、質も高まっていくのです。
もっとも「お客さまに聞け」は、顧客の言うがままに従うことではありません。グループインタビューなどで好評だった新商品案を実際に商品化してみたら鳴かず飛ばずだった事例は枚挙にいとまがありません。
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