顧客を9つのセグメントに区分

 顧客の移動の実態や、上位集中の実態を理解してから、顧客勘定PDCAサイクルの骨子を設計しました。以下、その手順をお伝えします。

 まずPlan(計画)です。最初に、顧客セグメント、顧客ステータスを設計し、顧客の振り分けを行います。それをベースに、既存顧客の維持目標、既存顧客の育成目標、新規顧客の獲得目標を設定しました。各セグメントやステータスに属する顧客に対して、維持・育成・獲得に向けた4P計画などを設計していきます。

 顧客セグメント、顧客ステータスの設計に当たっては、顧客の経済的価値属性でステータス設計することに加えて、顧客を9つのセグメントに区分しました。顧客が使った額の観点だけでなく、趣味嗜好からタイプ分けする手法を採用しました。嗜好性に関するさまざまな観点を因子化し、データマイニングツールにデータを投入してクラスター分析を実施しました(図17)。

【図17】クラスター分析のイメージ
【図17】クラスター分析のイメージ

 クラスター分析には、大きく分けると階層クラスター分析と非階層クラスター分析の2種類の方法がありますが、某専門店ECで実施したのは後者です。

 分析に活用した因子は、「購入商品のジャンル」「購入日(発売前予約か、発売日直後か、発売後しばらくたってからか)」「購入金額(定価購入か、割引購入か)」といったものでした。クラスター分析では、数学的に10個のクラスターをつくるとともに、運用面を考え、文学的に9個のセグメントを構成する形で運用しました。

 次のDo(実行)は、目標達成に向けた計画の実行、仮説の検証施策の実行です。要は 実際にやるということです。

 続いてCheck(検証)。私が実際に、顧客勘定PDCAサイクルの設計をした当初は、月次、四半期単位での顧客維持、育成、獲得計画の進捗管理を想定していましたが、実際にPDCAサイクルを進める中で、結果管理をシステム上でダッシュボード化した結果、日次バッチで毎日更新され、日単位で見られるようになりました。だからと言って、四六時中見張っていたわけではもちろんないですが、業務サイクルとしては日次でも、週次でも確認することができるようになったため、次のステップにかじを切るスピードと品質が向上しました。

計画を見直す2種類の方法

 最後のAction(修正)には、「ローリングプラン」と「コンテンジェンシープラン」という2つの修正の方向性があります。

 ローリングプランは、計画に向けた見直しです。例えばセグメントAの顧客が1000人いて、翌年に900人維持する目標を立てて計画を実行した結果、800人しか維持できていなかったとします。目標差はマイナス100人です。この結果を受けて、再度900人を維持できるような計画に練り直しを行い、改めて実行、検証を行う。これをローリングプランと呼びます。

 一方のコンテンジェンシープランは、目標や計画自体の見直しです。マイナス100人という結果は、もしかしたらそもそもの目標や計画に無理があったのかもしれません。顧客勘定PDCAサイクルの推進においては、実行した施策と結果の因果関係がなかなか見えない場合も多いので、中には達成困難な目標や、実行困難な計画が混ざってしまう可能性もあります。その場合には、目標や計画自体を練り直して、仕切り直しをします。

 このように修正のやり方には、目標に対する計画への見直しと、目標や計画自体の見直しがあり、このあたりを臨機応変に推進することで、目標の達成精度をより一層上げていくことができます。

 このような形で、私は顧客勘定PDCAサイクル3要素の3番目である、目標達成に向けた階段設計の枠組みを設計しました。PDCAをひたすら繰り返すことでチューンアップを図っていったのです(図18)。

【図18】顧客勘定PDCAサイクル 概要
【図18】顧客勘定PDCAサイクル 概要

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