データマイニングツールで解析

 顧客理解の次は、顧客の識別についてです。先述の顧客の経済的価値属性とは別に、「顧客がどのような行動をとっているのか」「顧客がどのような嗜好性を持っているのか」という観点から、「顧客がどんな商品を買っているのか」「どんなタイミングで買っているのか」などさまざまな観点を因子化し、データマイニングツールでデータを解析して、クラスター分析で顧客を区分する方法があります。

 クラスター分析とは、異なるものが混ざり合っている集団の中から互いに似たものを集めて集落(クラスター)をつくり、対象を分類するという分析手法です(図13)。

【図13】クラスター分析のイメージ
【図13】クラスター分析のイメージ

 コロナ禍の現在、クラスターという言葉が頻繁に使われていますが、この場合のクラスターは「小規模な集団感染や、それによってできた感染者の集団」を指します。集団という意味では一緒ですが、ここでは感染の意味では使っていません。

 分析の対象は人間に限らず、企業や商品、地域、時には質問項目を分類する場合もあります。クラスター分析を用いると、標準化された手続きに従って対象の分類ができるため、マーケティングリサーチにおいてはポジショニング確認を目的としたブランドの分類や、イメージワードの分類などに使われることもあります。

階層クラスター分析と非階層クラスター分析

 クラスター分析は、大きく分けると「階層クラスター分析」「非階層クラスター分析」の2種類の方法があります。

 非階層クラスター分析とは、似たようなパターンのデータを持った対象が、同じグループ(クラスター)に属するように自動でグルーピングを行うアルゴリズムです。同じクラスターの中に属する対象はなるべく似通っているように、異なるクラスターに属する対象間ではなるべく違いを際立たせるのが、非階層クラスター分析の特徴です。階層クラスター分析とは違い、大量の対象の分類に用いても結果が安定していることが特長で、サンプル数の多いリサーチを行った際のセグメンテーションに適しています。

 階層クラスター分析は、限られたサンプルから「どれとどれが似ているか」を探ることになります。

 非階層クラスター分析の難点としては、「分析者があらかじめ、いくつのクラスターに分類したいか」を入力しなければならない点があります。その制約下では「5個から10個くらいのパターン」で分析することがおススメです。

 データマイニングの基本は、仮説なく分析を実施することと言われてきました。通常、仮説を持って実行・評価・修正することをPDCAといいますが、データマイニングについては、思い込み(仮説)をいったん捨てて、アウトプットを見てみるのが基本的な使い方です。

 クラスター分析の結果、いくつかの塊ができます。関係性が強い因子は近くに、関係性の乏しい因子は遠くにアウトプットされるため、その因子の集合体が何なのかを読み取ることが次のタスクとなります。

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