コロナ禍の長いトンネルにおいて、経済、社会活動、医療など、今まで当たり前だと思っていたいろいろな常識が激変しています。デジタルシフト、さまざまな物理的制約からの解放が一気に進み、テレワーク、Web会議、紙・書類の大幅な削減、そして食事のデリバリーなど、「2カ月で2年分は進化した」と言われるような、待ったなしの変化が起こりました。

 小売業においては、実店舗の一時休業や閉鎖、再開後も営業時間制限やイベントの縮小・中止を余儀なくされています。やがてコロナが収束に向かっても、「コロナ前」の時代にそのままの形で戻ることはないでしょう。多くの企業でEC(電子商取引)事業は伸長したものの、実店舗+ECの売り上げをコロナ前の水準に戻すことは容易ではなく、まだまだ時間がかかる企業が多いかと思います。

 リアルビジネスが苦戦を強いられる中、多くの企業が、どこからどのようにデジタルシフト、およびデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるべきか、迷っている状況です。

 実店舗を中心とするビジネスが苦戦する一方で、商品・サービスの検討や購入におけるユーザーのデジタル利用の比率は高まっています。コロナ前に比べて、デジタルに不慣れだったユーザーも活用するようになりました。こうした状況下では、「ユーザーはこのくらいなら分かるだろう」といった、デジタルのお約束事が通じないケースが出てきます。コロナ前よりも、ユーザーインターフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)を顧客起点で丁寧に設計する必要性が高まっています。

 私自身も、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)追求型のBtoC(対消費者向け)ビジネスがどう変わっていくのか、何が変わらないのかも含めて考えてみました。

 コロナがあってもなくても、BtoCビジネスにおける定石は変わらないこと、また、変革待ったなしの状況下、定石を理解して一刻も早く手を打つ必要があることを確信し、本書の執筆を急ぐことにしました。

 その定石とは、顧客の客単価と客数の目標を設定したうえで、顧客の維持・育成・獲得を進める活動です。私はこのモデルを「顧客勘定Plan・Do・Check・Action(PDCA)サイクル」と呼んでいます。

 IT、デジタルの進化で、「見えなかったことが見えるようになる」「できなかったことができるようになる」、そんな変化が起きていることは間違いありません。

 コロナ禍という逆風にさらされながらも、変わるものと変わらないものを整理することで、皆さんの所属企業の業績回復、そしてコロナ前よりも拡大基調に持っていく支援ができればと思っています。

 本書のタイトルは『売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング“赤字顧客”を黒字に変える実践手法』です。その重要な方法論が、顧客理解に基づいたマネジメント、すなわち顧客勘定PDCAサイクルの推進です。

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