続・SNS時代の「メルマガ」新常識 第5回

撮影込みでロケに出かける――。まるで雑誌さながら、手の込んだメルマガを制作しているのが、セレクトショップ大手のビームスだ。同社は「愛着がなければ買ってもらえない」という発想の下、ロイヤルティー向上を目指し、メルマガ活用に注力している。SNS全盛の今、なぜメルマガに力を入れているのか。その勘所をメルマガを含めCRM(顧客関係管理)の施策に取り組む担当者に聞いた。

CRM(顧客関係管理)の施策に取り組む、ビームスカスタマーエンゲージメント本部CXデザイン部の山崎勇一部長にメルマガ活用の勘所を聞いた
CRM(顧客関係管理)の施策に取り組む、ビームスカスタマーエンゲージメント本部CXデザイン部の山崎勇一部長にメルマガ活用の勘所を聞いた

 コールセンターに1本の電話がかかってきた。「いつも楽しみにしていたのに、メールが届かなくなった」という、顧客からの問い合わせだった。

 「ここまで楽しみにしてくれているお客様がいたとは」。メルマガを含めCRM(顧客関係管理)の施策に取り組む、ビームスカスタマーエンゲージメント本部CXデザイン部の山崎勇一部長は驚いた。

 同社には、極めて型破りなメルマガがある。「BEAMS PLUS TIMES」だ。「メルマガ」と銘打ちながらも、そのボリュームはまるで雑誌さながら。ディレクターやバイヤーが、手掛けた商品に込めた思いやこだわりポイントを余すことなく熱く語る。しかも、そこに掲載する商品紹介の写真を撮るために、鎌倉にテニスをしにいくこともある。「メルマガのセオリーを度外視している」(山崎氏)と自負する。

「BEAMS PLUS TIMES」は、写真撮影のためにロケに出かけて、ディレクターやバイヤーが手掛けた商品に込めた思いやこだわりポイントを余すことなく熱く語る
「BEAMS PLUS TIMES」は、写真撮影のためにロケに出かけて、ディレクターやバイヤーが手掛けた商品に込めた思いやこだわりポイントを余すことなく熱く語る

 同社がそうしたメルマガ活用をするのには、明確な狙いがある。山崎氏は次のように説明する。「愛着がないと買ってもらえない。売り上げを上げていくには、ロイヤルティーを高めていかないといけない。メルマガには、アプリやLINEでは実現できないブランド理解を促す役割があると考えている」。それを象徴するのが、前述の熱量の高いメルマガなのだ。

 具体的には、顧客の「会員化」「アクティブ化」「ロイヤルティー向上」という3つの目的がある。まず、会員サービスの入会から初回購入までの過程で、オンボーディング(導入支援)や、購入体験を思い返してもらうことを目指す。その上で会員に向けて、各種情報を届ける。それを読んでもらうことによって、より深くブランドを理解してもらい愛着を高めていこうという考えだ。

 2022年8月時点で、ビームスのポイントやメルマガを受け取ることができる「BEAMS CLUB MEMBER」の会員数は935万人、その中でもメルマガサービスである「BEAMS CLUB JOURNAL」の配信数は163万通に達した。

 実際に、同社がいかにメルマガを活用しロイヤルティー向上に役立てているのか見ていきたい。

新着情報で売り上げにつなげ、読み物でブランドの愛着を育む

 ビームスは16年に、公式サイトをリニューアルした。「アプリなどを含め、顧客とのタッチポイントを増やしていく。情報配信のタイミングや内容を最適化していこう」(山崎氏)と考えた。その際に見直したものの1つが、メルマガだった。

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