続・SNS時代の「メルマガ」新常識 第7回

メルマガをリニューアルしたいけれど、どうしたらいいのか分からない。そう思う人も多いだろう。何を隠そう、日経クロストレンド編集部もまさに同じ問題に直面していた。そこで、前回のメルマガ特集での学びを基に、読者の方々のお役に立つべく、自ら“実験台”として改修を断行。今回は、前回の特集でも知見を共有していただいたメルマガのプロに結果を報告し、ダメ出しと共に、正しい改修への道筋と準備すべきことについても聞いた。

前回の特集の学びを参考にしつつ、日経クロストレンド編集部のメルマガ改修に着手。その結果は……(画像/Shutterstock)
前回の特集の学びを参考にしつつ、日経クロストレンド編集部のメルマガ改修に着手。その結果は……(画像/Shutterstock)

 2022年2月のメルマガ特集第1弾では、メルマガのありがちな誤解を破壊しつつ、メルマガづくりの「基本のキ」を専門家に聞いてまとめた。

▼前回特集はこちら SNS時代の「メルマガ」新常識

 この手法を自ら活用しない手はない。そう考えた編集部では、前回の特集で取材協力を得たマーケティング支援会社WACUL(ワカル)代表取締役の垣内勇威氏に意見を求め、編集部のメルマガ改修を敢行した。読んでくださっている方は気付いているかもしれないが、22年8月から新型メルマガがお目見えしている。今回は、メルマガ改修によってどのような結果につながったかを見つつ、そこから学べることをお伝えしていきたい。結論から言うと、うまくいった点もあるが、反省点のほうがはるかに多くあった。ぜひ、この失敗を皆さんの糧にしていただきたいと思い、記事にしていく。

 そもそも編集部では毎日、その日の新規公開記事をまとめた「デイリーメルマガ」を朝6時に配信している。編集部が推したい順番に、上から記事のタイトルとリンクが並ぶつくりが基本だ。

 これに加え、月曜日には前々週に想定以上に好評を得た記事について担当者が書く特別メルマガを、水曜日には前週の記事ランキングをテーマにしたメルマガをお届けしている。あとは、イベントや書籍などの告知系メルマガが不定期にある。会員の方には、週に最低7本、場合によっては8、9本が届く仕組みだ。

「デイリーメルマガ」を大胆改修 その結果は!?

 今回は、メインとなる「デイリーメルマガ」について追っていきたい。いきなりだが、以下がメルマガのリニューアル前(左)とリニューアル後(右)だ。

リニューアル前(左)とリニューアル後(右)。1本目が強調されていることが分かる
リニューアル前(左)とリニューアル後(右)。1本目が強調されていることが分かる

 前述のように、基本的に編集部が推したい順番に記事を並べていく形式は変わらない。大きく変えたのが、1本目の記事に全力投球するスタイルにしたことだ。

 これは、前回のメルマガ特集や、今特集の第1回の記事でも説明しているように、「伝えたいことをクリックされやすい場所に置く」「リンクは下に行けば行くほどクリックされる率が劇的に下がっていくため、1番上のリンクに全力投球すべきだ」という考え方に加え、「クリッカブルであることが分かりやすいほうが、クリックするハードルが下がる」(垣内氏)という意見を参考にした。

 だからこそ、1本目のみ画像とタイトルのサイズを大きくし、リード文をちょい見せする形式に。さらに、「この記事を読む」というクリッカブルなボタンを設置した。加えて、まとめて見たい人に向けて「本日の最新記事一覧はこちら」というリンクも備えた。

 結果はどうか。実際、変化は即座に訪れた。以下は有料会員向けのメルマガにおける流入ユニークブラウザー(UB)数の推移を追ったもの。緑が一番上に置いた1本目の記事への流入UBであり、青が2~4本目の流入UBの合計を示す。

デイリーメルマガの有料会員流入UB数の推移
デイリーメルマガの有料会員流入UB数の推移
編集部制作

 よく見ると、冒頭の1本目の流入UBが増え、2~4本目の流入UBが減少している。改修前後のそれぞれ1カ月の平均で見ると、1本目の流入UBは変更後に28%向上し、一方の2~4本目は19%減少した。

 1本目の記事をしっかりクリックしてくれるようになったように見えるが、喜ぶのは早い。以下は、メルマガ全体のクリック率と流入UBをまとめたものだ(合計クリック率を1として指数化)。合計クリック率(クリック率の合計)とユニーククリック率(クリックした人の数の割合)は、共にリニューアル後に僅かながら上昇しているように見える。だが、統計的な有意差はなく、劇的な向上とまでは至っていない。

デイリーメルマガのクリック率の変化
デイリーメルマガのクリック率の変化
変更前の合計クリック率、ユニーククリック率をそれぞれ1とした場合の数字の変化。複数のサンプルの平均。有意差(p<0.05)はなし

専門家はどう見る? 露呈した“準備不足”

 では、この変化を専門家はどう見るのか。

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