
好評だった「メルマガ特集」の第2弾。InstagramやTikTokといった、新しいSNSや動画共有サービスのマーケティング活用が加速する中、メルマガの重要性が増していることを2022年2月の第1弾特集で解説した。「オワコン」と言われながらも、生活者とほどよい距離感が保てると、実は積極活用する事例も目立つ。今回はSNS全盛時代のメールマーケティングをさらに深掘り。第1回と第2回では、前回の特集のおいしいところを振り返りつつ、メルマガを進化させるために見るべき重要業績評価指標(KPI)と読み解き方について専門家と探っていく。
SNS全盛の時代、マーケティングにおいてもLINEやInstagram、さらにはYouTubeやTikTokといった動画共有サービスなど、多種多様なチャネルで企業と生活者がつながるようになった。そんな中、「メールは終わった」「メルマガは時代遅れ」といった声もささやかれる。だが、それは勘違いであることを、2022年2月の特集「SNS時代の『メルマガ』新常識」で専門家と共に解説した。
▼前回特集はこちら SNS時代の「メルマガ」新常識メルマガは生活者とつながるためのメインストリームの一角から降ろされていないどころか、ほどよい距離感でつながれるツールとして重要性が再認識されている。「世界的に見ると、メールマーケティングの市場はいまだ2桁成長を続けている。国内でも新たにメールマーケティングを積極的に行ったり、拡充したりする企業が増えている」と、デジタルマーケティング支援会社WACUL(ワカル)の執行役員・最高マーケティング責任者(CMO)でメールマーケティング・エバンジェリストの安藤健作氏は指摘する。
当然、プライベートのコミュニケーションはメールからLINEやInstagramのDM、メッセンジャーなどにシフトしている。ただ、BtoBのビジネスの現場ではいまだメールが主力ツールの一つ。また、BtoCにおいても、会員登録などに使うメールアドレスは多くの人が保有し続けている。LINEやInstagramといったツールで相互にコミュニケーションを取るためには、互いに同じアプリをインストールする必要があるが、メールはその縛りがない。「コミュニケーション手段が多様化する中で、“共通プラットフォーム”としてのメールが見直されている」(安藤氏)と言う。
メールの役割が見直され、メールマーケティングが進化している中、メルマガでは依然としてレガシーな“古い定石”がまかり通っていることも前回の特集で解説した。極めて重要なことなので少し振り返っておきたい。
【前回特集の振り返り】メルマガ「6つの誤解」とは
「誤解だらけ」と安藤氏は指摘する中で、特に知っておきたいのが特集の第1回と第2回で説明した「6つの誤解」だ。
誤解(1) 頻度を高くすると、嫌がられて解除される
誤解(2) 送るタイミングを吟味して、読まれるときに送る
誤解(3) いいコンテンツをつくれば、読んでもらえる
誤解(4) 配信リストは多いほうがいい!
誤解(5) ターゲティングは細かくしたほうがいい
誤解(6) 気づいてもらうために、目立つタイトルにしたほうがいい
詳細は上記の過去記事に譲るが、6つの誤解から見えてきたのは、「基本に立ち返ることの重要性」(安藤氏)だ。
メールマーケティングは高度化しており、多種多様な手が打てるようになってきた。そんな中、施策の多様化や細かい調整を意識するあまり、メンテナンスに労力と時間がかかり過ぎて、思ったような費用対効果(ROI)を得られない状態に陥るケースも目立つ。
また、「“1通入魂”でつくり込み過ぎ、低頻度でしかメルマガを送っておらず、効果が出ない事例も多い」(安藤氏)。だからこそ、「まずは無理せず継続できる『80点のメルマガ』を目指すべきだ」と安藤氏は指摘する。
本特集では、第1回と第2回で80点のメルマガづくりとそれをブラッシュアップしていくためのKPIの考え方をまとめつつ、第3回以降では実際の企業の取り組みと試行錯誤の様子から、80点以上のメルマガをつくるためのヒントを探り出していく。
最短距離で「80点のメルマガ」をまずは目指す
KPIに進む前に、まず80点のメルマガとはどういうものか。
詳細は以下の記事でも触れているが、端的に言うと「『リストの質』『コンテンツ』『タイミング』の3つの掛け合わせを考えること」(安藤氏)。
▼関連記事 販促メルマガ「6つの誤解」 成果を出すのは「80点のメルマガ」まず、「リスト」で重要なのは「量」ではなく「質」だ。前回特集で取り上げた「誤解(4)配信リストは多いほうがいい!」でも解説したように、やみくもに量を増やすと当然反応が悪くなるうえ、迷惑メールに認定されるリスクが高くなるなどの弊害もある。
また、「コンテンツ」というと、長く書いたり情報を盛り盛りにしたりと考える人もいるかもしれないが、正解はその逆。「実は、読者は中身を思ったほどしっかりは見ていない。過去の調査では、76%の人が1通当たり8秒未満しか見ていないことが分かっている」と安藤氏。8秒未満、つまり7秒程度と考えると、文字数換算では70~140文字程度という。つまり、Twitterのツイートほどしか読んでくれないのだ。
さらに、「過去の調査では、メルマガ内のリンクは一番上のリンクが最も押される確率が高く、下に行くにつれて半減していくことも調査で判明した」(安藤氏)。情報盛りだくさんで、リンクをたくさん張った手の込んだメルマガをつくっても、思ったほどは響かないケースが多い。
当然、ファンの熱量が高い企業やブランド、サービスであれば、濃くて長い、情報盛り盛りのメルマガも読んでくれるかもしれない。だが、それはファンとの関係性があってこそ。濃いファン向け以外では逆効果になることも多い。
「タイミング」に関しては、当然サービスやメルマガの受信者などによって反応がいい曜日や時間帯は変わる。だが、それよりも大事なのは「頻度」だという。「誤解(1)頻度を高くすると、嫌がられて解除される」でも解説しているように、頻度が高いからといって購読解除が大きく増えるわけではない。むしろ、どんなに力を込めて長い文章を書いても、リンクをたくさん張った凝ったレイアウトにしたとしても、「開けてもらうためのハードルがあるうえに、開けてからも短時間しか見ない人が多い状態では、“1通入魂”するよりもその力を分散して頻度を高めたほうが、効率的にリーチできる場合は多い」と安藤氏は話す。
まずは、信頼性の高いリストをベースに、コンテンツに力をかけ過ぎず、ある程度の高い頻度で発信できる仕組みをつくることが80点のメルマガへの近道だ。
配信頻度を高められれば、色々試すことも可能になる。「メルマガの魅力は、あまりコストをかけずに運用できるうえ、高頻度でPDCA(Plan・計画、Do・実行、Check・評価、Action・改善)を回せること」と安藤氏は話す。どんなことも、最初からうまくいくはずはない。無理せず高頻度で試せる80点のメルマガをつくり、PDCAを高速で回してさらに上を目指すのが得策だ。
メルマガで見るべきKPIはこの5つ
メルマガの利点であるPDCAを回すために、指針とすべきKPIは何か。ここからは、KPI設定とその変化をどうとらえていくべきかについて、引き続き安藤氏に聞いていく。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。