消費&マーケ 大予測2023 第12回

新型コロナウイルス禍で大きな打撃を受けた飲食店に客足が戻りつつある中、好調なのが、吉野家がECや小売店などで展開する「冷凍 牛丼の具」だ。2021年春に値上げをしたにもかかわらず、売り上げを伸ばしている。ヒットの要因は、ステイホーム需要だけではない。主婦層にアプローチした施策の数々と、消費者の購買行動の変化をとらえた巧みなマーケティング戦略にあった。

吉野家の「冷凍 牛丼の具」の並盛(120g)。主に並盛(120g)、大盛(160g)、ミニ(80g)の3サイズを販売している(画像/吉野家のECより)
吉野家の「冷凍 牛丼の具」の並盛(120g)。主に並盛(120g)、大盛(160g)、ミニ(80g)の3サイズを販売している(画像/吉野家のECより)

 同社の「冷凍 牛丼の具」は21年春に値上げに踏み切った。「値上げ当初は売り上げが落ちると予想していた」と、吉野家 外販事業本部 事業企画室長の諏訪和博氏は振り返る。しかし、同商品は、値上げ後にもかかわらず販売数量の減少を6%に抑え、売り上げは値上げ前を上回った。

 値上げ直後の消費者の購入意欲を維持するため、ECでは1食当たりの内容量やパック数を増やすキャンペーンを実施するなどの対策を講じた。これらの施策が売り上げに寄与したことはたしかだろう。

 しかし、「冷凍 牛丼の具」が値上げ後に売り上げを維持できたのは、値上げ直後の対応のみによるものではない。値上げ前に数年かけて適切に見込み顧客を判断し、その層への販売を促進して顧客層を拡大できていたことが、値上げ後の売り上げの維持にも貢献した。

「我々の競合は牛丼店ではなく○○」

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