消費&マーケ 大予測2023 第11回

物価高騰の中、少々高くても売れている商品もある。その一つが、冷凍食品だ。需要の高まりを受け、2022年には冷凍食品専門店が相次いでオープン。これらを取材すると、既存スーパーの冷凍食品とは全く異なる、新たな消費行動が見えてきた。

 冷凍食品卸のアイスコは2022年12月、川崎市に冷凍食品専門店「FROZEN JOE’S(フローズンジョーズ)」の1号店をオープンした。場所は東急東横線・元住吉駅の商店街の一角。有名レストランのメニューや中華、スイーツ、全国の特産アイスなど、一般のスーパーでは売られていない約320品目の冷凍食品を扱っている。

2022年12月にオープンした冷凍食品専門店「FROZEN JOE’S 元住吉ブレーメン通り店」。東急東横線・元住吉駅から徒歩2分
2022年12月にオープンした冷凍食品専門店「FROZEN JOE’S 元住吉ブレーメン通り店」。東急東横線・元住吉駅から徒歩2分
店舗面積は82.6平方メートルで、小さめのコンビニエンスストアほどの広さ
店舗面積は82.6平方メートルで、小さめのコンビニエンスストアほどの広さ

価格競争の常態化に一石を投じたい

 アイスコは1948年に前身である「相原冷菓店」として創業し、アイスキャンディーの製造・販売・卸売を開始。96年から冷凍食品の卸売りを本格的に開始する一方、神奈川県内で9店舗の食品スーパーも運営している。「冷凍食品の取り扱いとスーパーの運営双方に専門性を持っているので、それを生かした業態として冷凍食品専門店を展開しようと考えた」(同店を企画したアイスコ専務の三國慎氏)

 もう一つの狙いは、価格競争が常態化している冷凍食品業界に一石を投じること。「卸の役割はメーカーから安く仕入れて小売店に安く売ることだけではないと考えている。価値あるものなら適正売価でも需要はあり、顧客も獲得できることをこの店で示したい。各業種(メーカー・卸・小売)が適正な利益を確保できなければ良い商品は生まれないし、良いサービスの提供も困難になる」(三國氏)

 そのために一般のスーパーとは商品を差異化しているが、“差異化=高級化”とは考えていないという。「一般に手の届かない価格帯ばかりを増やすと、普段使いができなくなり、市場成長を鈍化させてしまう危険性もある。商品の価格は200円から2000円前後まであるが、全商品の平均単価は500円前後にしている」(三國氏)

有名レストランや機内食、ご当地の味も

 扱っている約320品目のうち、約35品目が有名レストランのメニュー。店舗中央の冷蔵ケースには、「専門店の味」「全国ご当地餃子」「エアラインの味」「ファミレスの味」など、一般のスーパーでは見かけないカテゴリーの冷凍食品が並ぶ。世界選手権で優勝経験のある職人が手掛けるナポリピザや京都の和食店のおばんざいなどが売れ筋だという。

圧倒的一番人気という名古屋のレストラン「チェザリ」のナポリピザ
圧倒的一番人気という名古屋のレストラン「チェザリ」のナポリピザ
「ご当地グルメ」コーナーでは京都の和食店「京菜味のむら」のおばんざいが人気
「ご当地グルメ」コーナーでは京都の和食店「京菜味のむら」のおばんざいが人気
「エアラインの味」は実際にビジネスクラスの機内食で提供されている冷凍食品を販売。「ファミレスの味」では「バーミヤン」のチャーハンやギョーザなどが人気
「エアラインの味」は実際にビジネスクラスの機内食で提供されている冷凍食品を販売。「ファミレスの味」では「バーミヤン」のチャーハンやギョーザなどが人気

目指しているのは「冷凍食品のカルディ」

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
15
この記事をいいね!する