
大手ECが勢いを取り戻しつつある。巣ごもり需要が一服して成長が鈍化すると思われたが、足元の物価高で節約志向の消費者を取り込み、大規模セール「ブラックフライデー」は活況に終わった。特に「ポイ活」を武器にお得感を打ち出したヤフーや楽天市場は取扱高を伸ばしているが、需要を先食いしている懸念もある。23年はセールを縮小しつつ、利用者の定着を目指す動きも進みそうだ。
「暮らしを豊かにする上で重要なのは『家計』と『時間』の節約だ」。アマゾンジャパンは22年11月18日、メディア向けに「Amazonブラックフライデー」の発表会を開いた。プライム・マーケティング事業統括本部の鈴木浩司ディレクターは消費者の節約志向の高まりを強調し、「ブラックフライデーをはじめとしたセールなどの実施で節約に貢献し、配送サービスの提供を通して時間の節約もサポートしていく」と語った。
コロナ禍の巣ごもり需要が追い風となり、ECは20年4月から高成長を続けてきた。だが、22年に入って新型コロナが落ち着くと巣ごもり需要が一服。ナウキャスト(東京・千代田)がクレジットカードのデータからまとめる「JCB消費NOW」によると、オンライン消費の伸び率は22年5~6月に2カ月連続で前年割れとなった。
リアル店舗での消費額が21年10月から13カ月連続で前年を上回ったのとは対照的な動きで、ECの高成長に陰りが見え始めたとみられてきた。だが、円安などで物価高が進み、足元では消費者の節約志向が鮮明となる。こうした環境下で再び支持されているのが、ポイント戦略を軸に「お得感」を演出する大手ECだ。
「コロナ禍が落ち着いてリアルに利用者を奪われるという悲観的なシナリオもあったが、価格に敏感な消費者が思った以上に多くECに定着している」。ヤフーのショッピング統括本部長の畑中基・執行役員はこう強調する。ヤフーによると、一般的にリアル店舗と大手ECでは、同じ商品でも販売価格はリアルのほうが安いケースが多い。ただ、ポイントの付与分を考慮すると、実質価格はECのほうが安くなるという。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。