
値上げが当たり前になり、企業にとっては商品への価格転嫁がしやすくなったといえる昨今。しかし、値上げによって買い控えやより安い競合商品への切り替えが起こり、売り上げが下がるのは避けたいところ。では、値上げしても売り上げを伸ばしているのはどういった商品か。
全国のスーパー約470店の販売データを集める日経POS情報のデータを使い、過去1年間(2021年12月~22年11月)の月ごとの平均価格と売り上げ(千人当たり金額)の推移を分析。平均価格と売り上げの両方が前年同月比を超えている商品をピックアップした結果、いくつかの傾向が見えてきた。
(1)トップブランドは強い
まずは「強いブランド力」だ。値上げのイメージが強い小麦を使ったパスタでは、「マ・マー」(日清製粉ウェルナ)の商品は少しずつ平均価格が上がっているが、売り上げも前年を下回る月が多かった22年前半に比べ、後半は前年比増の月が増えている。しかも、「2位にPB(プライベートブランド)が定着し、トップメーカー以外は厳しい状況になっている」(日経POS情報を担当する日本経済新聞社 情報サービスユニット担当部長の久慈未穂氏)。ブランド力で生き抜くには、トップブランドであることが条件の一つといえそうだ。
ただ、トップブランドであれば安泰というわけではない。「トップブランドでも値上げ直後は売り上げが下がる。それを戻せるかどうかでブランド力の真価が問われる」と久慈氏は言う。
ちなみに、平均価格は上がっていないものの、22年のヒット商品の代表格といえる乳酸菌飲料「Y1000」(ヤクルト本社)は定価(メーカー希望小売価格)に近い価格で品薄が続いている。さらに面白いのは、定番品の「New ヤクルト」も売り上げが伸びているのだ。「Y1000効果がほかの商品に波及しているのでは。ブランド力がきれいに出ている」(久慈氏)
(2)どうせ高いなら健康系
値上げが相次いでいる食用油では、定番品が売り上げを落とす中、「コレステロール0(ゼロ)」をうたう「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油 軽やか仕立て」(J-オイルミルズ)や「日清ヘルシーオフ」(日清オイリオグループ)といった健康機能を売りにする商品が売り上げを伸ばしている。「健康にはお金を惜しまず、度重なる値上げによって『これ以上高くなるなら機能系のほうがいい』という考えになっているのでは」(久慈氏)。原材料費や物流費の高騰で値上げが避けられない商品ジャンルであれば、健康機能をプラスするのが一つの方策といえる。
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