
インフレの抑制を狙う米国の連邦準備理事会(FRB)は利上げに踏み切った。その足元で広がる小売業界では、どんな変化が起きているのか。大手スーパーの米クローガーが刷新したプライベートブランド(PB)の取り組みを中心に、大型スーパーチェーンのインフレ対策を分析する。
米労働省が2022年12月13日に発表した11月の消費者物価指数(CPI)を見ると前年同月比の総合指数は7.1%、食品は10.6%の上昇となった。伸び率には落ち着きが出てきたものの、依然として高い水準を維持している。
新型コロナウイルス感染症拡大のパンデミックで物流が滞り、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーの価格の上昇、中国のゼロコロナ政策による生産の停滞など、終わりの見えないインフレが続いている。経済全般の不確実性が高まり、米国の家庭や世帯は、生活必需品以外の支出に対して慎重な姿勢を取ってきた。
そうした中でも、米国の小売業界は「巣ごもり」から脱却し、徐々に旺盛な需要を取り戻しつつある。全米小売業協会(NRF)によると、22年11月末の感謝祭に伴う「ブラックフライデー」などの週末セールで買い物をした人は1億9670万人となり、統計を始めてから最大になった。注目は、そのうちオンラインで買い物をしたという人は2%増にとどまったのに対し、店頭で買い物をしたという人は17%増えているところだ。
インフレの長期化は予想されるものの、自由に買い物ができなかったパンデミックの反動もあり、需要は底堅い。そうした状況の中、利益を削る値下げだけで乗り切ることは得策とは言えない。そこで多くの小売店は、顧客の課題に向き合い、新しい買い方や選び方を提案できるPBの取り組みを強化している。
プライベートブランドはオムニチャネルで進化
従来、PBと言えば、いわゆるナショナルブランド(メーカーが自社製品に付けたブランド)の商品に比べてパッケージを簡素化し、価格を2~3割安く設定しているものが多かった。例えば、100円のメーカー品の隣に、同質のPB商品を80円で販売するというものである。小売店が販売棚のコントロール権を持っているという優位性を生かし、顧客の求める安さという価値に応えながら、利益を調整するという戦術によるものだった。
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