
世界的なインフレによる経済停滞への警戒感が広がっている。不景気へと向かう状況で、企業はまず広告費の削減に踏み出すケースが多いといわれる。収益の大半をネット広告から稼いできた米国の大手IT企業も、広告からの収益減少にあえぐ。2023年、新型コロナウイルス禍下のDX(デジタルトランスフォーメーション)バブル後のIT業界にどんな変化が起きるのか。
「10年間続いてきた黄金期が終わり、冬の時代が到来する」。米国IT大手の2022年7~9月期の決算が出そろった22年11月、ある著名アナリストがそんな嘆きの声を上げた。2008年のリーマン・ショック以降、IT業界はスマートフォンやSNS(交流サイト)、クラウドやAI(人工知能)といった技術を軸として、順調な成長を続けてきた。新型コロナウイルス感染症が拡大する中でも、テレワークをはじめとするDX需要に沸いた。“コロナDX”のミニバブルともいえる状況の中で、IT企業はさらなる成長を目指し、雇用を拡大してきた。
コロナ禍で急激に進んだDXによって需要を先食いしながら、これからも成長が続くという楽観的な見方が広がった。その反動が大きかった。22年、ワクチン接種の広がりでポストコロナの時代が見えてくると、DX需要も落ち着いてきた。同時期にインフレが広がり、米国の利上げによって株価も落ち込んでいる。例えば、米メタは22年の年初と比べて、同年12月中旬の株価はほぼ3分の1になった。
採用を拡大していたIT大手も、一転して大量解雇に踏み切らざるを得なかった。米メタが1万1000人、米ツイッターは全従業員7500人の約半数を削減した。米アマゾン・ドット・コムも1万人規模を整理するという報道も流れた。決済サービスの米ストライプは1100人、ライドシェアの米リフトも700人など、中堅企業にも解雇の波は広がった。
広告売り上げがピーク越えの兆し
IT企業が軒並み大量解雇に踏み出した背景としては、ネット広告費が減った影響が大きい。景気が悪くなると、企業は支出を抑えるためにまず広告費を削減するといわれる。「昔はテレビ広告でその傾向があったが、今はネット広告が大きく影響を受ける」(米シリコンバレーのベンチャーキャピタル、スクラムベンチャーズ創業者兼ジェネラル・パートナーの宮田拓弥氏)。
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