2023年1月4日発売の「日経トレンディ2023年2月号」 ▼Amazonで購入する では、「新NISA式 ほったらかし株&投信」を特集。25年以上続いた長いデフレから、インフレへと転換点を迎えている日本。2023年以降の見通しは良好といえるのか。金融ストラテジストの岡崎良介氏に語ってもらった。

※日経トレンディ2023年2月号より。詳しくは本誌参照

金融ストラテジスト 岡崎良介 氏
金融ストラテジスト 岡崎良介 氏
岡崎良介 氏
金融ストラテジスト
1987年に野村投信(現野村アセットマネジメント)入社。バンカートラスト信託銀行(現ドイチェ・アセットマネジメント)を経て、2004年にフィスコ・アセットマネジメント(現アストマックス投信投資顧問)の運用担当最高責任者(CIO)として参画。12年に独立し現職
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――22年を振り返ると。

 インフレの年でしたね。特徴的な動きが、連邦準備理事会(FRB)による米国の金利引き上げ。金利を上げるときは少しずつが通例でしたが、2022年は年初の0.25%から一気に4%を超える水準まで利上げしました。これに驚いて米国の株価は下落しました。

 一方、経済はそう簡単に変わりません。米国は数年前から、空前の転職ブームです。これによって賃金の水準が上昇しています。さらに転職の多くが転居を伴うので、住宅価格も上がっていった。私はこれが米国でインフレを加速させた大きな要因だとみています。

 リオープン(経済再開)が遅れた日本経済は、米国の1周遅れのような状態です。22年は財もエネルギーも価格が上がりました。私は22年で、1995年から続いたデフレを完全に脱却したとみています。

――久しぶりのインフレを迎える日本の見通しは。

 1年ほど前の米国は、インフレ圧力が強まっているのに金融緩和を続けていた「高圧経済」でした。日本銀行はまだ利上げをしていないので、今の日本はそれに近い状況です。米国と同様、需要が供給を上回り、経済は活況になるでしょう。

 物価上昇に加えて賃金が十分に上がらない結果、買い控えが消費の冷え込みにつながるといわれていますが、私はそれに否定的です。実際に足元の家計消費は確実に増えています。国民全体では1000兆円の現預金があるので、まず構造的には賃金が上がらなくても、収入以上に消費できるわけです。

 物価変動を考慮した実質賃金はまだ上がっていませんが、実は情報産業など景気が良い分野では、賃金上昇が露骨に始まっています。また、現在75歳前後の団塊といわれる世代がリタイアし、人口構造的に若い人に給料を振り向けやすくなっていきます。インフレ率は1~3%台で推移していくとみていますが、これなら賃金の上昇がいずれ追い付いてくるはずです。

 デフレだった26年の間にスマホで情報をチェックし、ECサイトで素早く買い物する人も増えるなど、個人の消費を取り巻く状況は変わっています。転職が当たり前になり、給料を上げやすい土壌もある。こうした「世代交代」によって、買い控えにつながるデフレマインドもかなり払しょくされていると思います。

 デフレでは株や不動産などの資産価格が上がらず、これが長期不況の主因の一つでした。例えば、95年から2021年までTOPIX(東証株価指数)は年率1%程度しか上がりませんでしたが、今後は上昇率が高まることでしょう。不動産価格は少子高齢化に伴い下落の懸念がありましたが、逆に高齢になれば便利な都市部に人が集中する。実際、関東や近畿など都市部の不動産価格は上がっていますし、インフレ下で緩やかに上昇を続けるはずです。

 23年は、日本の投資家に有利な1年になると思っています。

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