2023年1月4日発売の「日経トレンディ2023年2月号」 ▼Amazonで購入する では、「新NISA式 ほったらかし株&投信」を特集。景気後退懸念から相場の調整局面が続く米国株だが、資産を大きく増やしたいなら外せない“武器”だ。2023年にまず考えられる戦略が、22年に値下がりして割安になった高成長(グロース)株を狙うこと。「GAFAM(ガーファム)」銘柄に加え、EV大手のテスラや画像処理ソフトウエアのアドビなどのハイテク株に注目したい。
※日経トレンディ2023年2月号より。詳しくは本誌参照
米国のインフレ急進とそれに伴う金融引き締めを背景に、景気後退懸念から相場の調整局面が続く米国株。しかし資産を大きく増やしたいなら外せない“武器”だ。その理由は、米国株の実績にある。1992年以降の約30年間で、米国株を代表するS&P500種株価指数の値は約9.1倍になった。同期間の日経平均株価は約1.6倍にしか増えず、日米の差は明確だ。米国株が強い理由について、マネックス証券チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎氏は「米国は経済の規模が大きく、先進国ながら人口が増え続けている。また、イノベーションに大切な、ダイバーシティ(多様性)や世界トップクラスの大学なども充実。当面は資本主義国のリーダーであり続けるはずだ」と考える。
また米国企業は日本企業よりも株主還元の意識が高く、増配を長期間続ける企業も多い。銘柄によっては中長期のほったらかし投資にも向く。そして、1株単位で購入できるなど、投資しやすいのも利点だ。日本株は原則として100株単位での購入となるため、最低投資金額が数十万円や中には100万円以上になる銘柄も少なくない。これが米国株なら、アップルやマイクロソフトなどの人気銘柄でも5万円以下で投資できる。
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昨今は、様々なネット証券が米国株取引に注力し、購入のハードルは大きく下がった。SBI、楽天、マネックスのネット証券大手3社では、いずれも4000銘柄以上の米国株を購入できる。売買手数料は3社とも約定代金の0.495%(税込み)。毎日のように売買をするのでなければ気にならないレベルだ。
ただし、銘柄や買い時は慎重に見極める必要がある。米国株は、2022年1月からS&P500が約16%下落するなど、大きく調整しているからだ。直接の理由は、ウクライナ戦争などの影響による物価高を抑制するために、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を大幅に引き上げるなど強硬な引き締め姿勢を続けたことにある。また「20〜21年の米国の株価上昇は、20年上旬のコロナショックに対応すべく行われた現金給付などの経済対策によって人工的につくられた。その反動が22年に起きている」(岡元氏)との側面もある。
軟調相場はいつまで続くのか。岡元氏は「S&P500構成企業のEPS(1株当たり利益)成長率を見ると、23年第3四半期には前年同期比でプラスに回復する見込み。ならば、23年前半に10%程度の株価調整の可能性はあるものの、その後は回復に転じる」と予想する。
波乱相場の23年にまず考えられる戦略が、22年に値下がりして割安になった高成長(グロース)株を狙うこと。外国株に詳しい、びとうファイナンシャルサービスの尾藤峰男氏も「金利上昇に弱い傾向がある高成長株が22年に大きく下げ、割安感が出ている銘柄が多い。よく吟味するなら、絶好の買いチャンスだ」という。
12年からの約10年間で米国の株式市場をリードしてきた「GAFAM(ガーファム)」銘柄も依然として有力な投資先候補だ。GAFAMは、具体的にはアルファベット(グーグルの親会社)、アップル、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトの5社を指す。いずれも22年に株価が20%以上下落した。
5社の中で買うべき銘柄はどれか。取材した識者からは、アップルやアルファベットを支持する声が多かった。「リスクが低いのはアップルだろう。23年にはMRヘッドセットも販売する見込みで事業に将来性があるし、自社株買いや増配など、株主還元姿勢も良い。アルファベットも、米国経済の鈍化に伴って広告収入が減ったが、検索技術は進化しており、自動運転できる電気自動車(EV)の『Waymo』など新規事業も有望だ」(岡元氏)。この他、EV大手のテスラや画像処理ソフトウエアのアドビなど、今後の株価の回復が期待できるハイテク株も狙い目だ。
一方で、景気に左右されにくいディフェンシブ(防御的)な選び方もある。分かりやすいのが、配当が毎年増える「連続増配」銘柄だ。連続増配を30年以上続ける企業は日本では花王だけだが、米国では90社以上が30年以上増配を続けるなど、選択肢が多い。連続増配は、長期間安定して利益を出せている証拠であり、株価急落のリスクが低い。また購入時は配当利回りがそれほど高くなくても、投資金額ベースで見れば数年後に高利回りになるのもうれしい。高成長株より株価上昇は緩やかなことが多いが、生活費としても使える配当が着実に受け取れるのは魅力だ。
なお、米国株の配当金は、まず米国で10%課税された後、残りの90%に対して日本で20.315%が課税されるので、手取りは約71.7%になる。ただし、米国で源泉徴収されたぶんは、確定申告で「外国税額控除」をすれば、日本での課税額から差し引いてもらえる。
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