
「CES2023」からマーケターが学べることは何か? CESを定点観測しているヤプリのエグゼクティブスペシャリスト 伴大二郎氏が、23年のCESを振り返り、今日本企業が取り組むべきことに切り込む。キーワードは、「韓国企業に学ぶ生活者視点の製品作り」と、「新市場拡大の鍵を握るテックの民主化」だ。
3年ぶりの本格開催で、多くの人がラスベガスに戻ってきた「CES2023」。今回のテーマである「BE IN IT」には、「(課題の)中に入れ、自分事化しろ」というメッセージが込められていた。
スマートフォンやAI(人工知能)、IoT製品などの台頭により、この10年でテクノロジーの民主化は大きく進んだ。多くの人がこうした最新技術を生活に取り込み始めた一方で、我々の生活をより豊かにする技術として期待される自動運転やドローンなどは、国や社会の規制により足踏みしており、“実用化”レベルまで進んでいるとは言い難い。CESの展示を見ていても、昨年との差分を見つけるのは難しかった。
今年のCESを振り返り筆者が感じたのは、テクノロジーが民主化した今だからこそ、「人の感覚や感情」をどう捉えるか、つまり「ヒューマンタッチ」であることがより重要性を帯びてきているということだ。テックを活用し、人の気持ちにどこまで寄り添えるか――。CES出展各社の製品を見ていると、消費者の気持ちに応えようとする彼らの絶え間ない努力が感じられた。ではここから具体的に、CESを通じて見えてきた2023年のトレンドを探っていこう。
スマート家電は「モノのスマート化」から、人間らしさあふれる「コトのスマート化」へ
CES2023において際立っていたのが、韓国勢の活躍だ。大手を中心に多くの企業が製品を通じて、人の生活に寄り添いながら社会問題に向き合う姿勢を見せた。
例えばLG電子。同社が展示したシューズケースの「LG Styler(LGスタイラー)」は、適切な温度管理の下で靴の保管ができるだけでなく、殺菌や消臭機能も兼ね備える。最上部には360度回転するターンテーブルが設置されており、また所有する靴をソーシャルメディアでシェアする機能もあるなど、オンライン・オフライン双方で商品を“展示”でき、コレクター心をくすぐる製品となっている。韓国在住のアーティストとのコラボにより、ケース自体のデザイン性が高いところもポイントだ。
他にも季節や気分に合わせて自在に色を変えることができる冷蔵庫や、NFT(非代替性トークン)コレクションの展示もあった。家電にアートの要素を取り入れたことで、消費者はクリエーティビティーにあふれた生活を送れることだろう。特に若い世代から支持されることが容易に想像できるプロダクト群だと感じた。
韓国サムスン電子は、サステナビリティー(持続可能性)に力を入れる1社だ。デジタルアプライアンス事業 執行副社長兼R&Dチーム長のイ・ムヒョン氏が、「CES2023 で発表するテクノロジーは、サステナビリティーを顧客体験の中核に据えている」と明言した通り、サムスンの提唱する「SmartThings(スマート・シングス、スマート家電など)」とは、単にモノをスマート化した商品ではない。一歩踏み込んだ、“コトのスマート化”と言える。コトのスマート化とは、テクノロジーの力で生活を便利にする、豊かにする、省エネに寄与するなど、あらゆる面で生活の質向上に直結するメリットを指す。
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