マーケターのためのCES2023キーワード 第9回

今や美容とデジタルは切り離せない。一人ひとりのニーズに応えるパーソナライズ商品を生み出す「ビューティーテック」もCESの注目トピックの1つ。今回国内からはコーセーが初出展した。マーケターが押さえるべきビューティーテックのポイントはどこにあるのか? 注目したいのはパーソナライズのさらなる進化に加えて、各社が「カスタマイズ」をサービスに取り入れていることだ。その実態を追った。

 一人ひとり肌や髪の状態は異なる。そのため、旧来の「マス向け商品」が必ずしも自分に合うとは限らない。そこで広がってきたのが、商品の「パーソナライズ化」を実現するビューティーテックだ。例えばIoT機器が備える各種センサーと手持ちのスマートフォンを連係することで、ユーザーは、自身の肌質や髪質にマッチする商品やサービスと出合い、利用できる。

 ここ数年のCESでも、関連のデジタル商品やサービスが注目を浴びてきた。例えば、米ジョンソン・エンド・ジョンソンは2020年、AI(人工知能)を用いた独自の肌分析技術と3Dプリンターを活用した“究極のパーソナライズフェイスマスク”をCESで発表し話題になった。

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 23年のビューティーテックは、どのような進化を遂げたのか? 「カスタマイズ」をキーワードに国内から初めてCESに出展したコーセーの事例など、注目の4製品を見ていこう。

コーセーの出展ブース。東京工業大学との共同研究によりメークシミュレーションシステムを展示した
コーセーの出展ブース。東京工業大学との共同研究により開発したメークシミュレーションシステムを展示した

CES常連のロレアル、23年は「眉毛」に着目

 まずは、例年CESで革新的な製品を発表し続けている仏ロレアルから見ていく。ロレアルは、CES本番開幕前に行われるメディア向けの製品お披露目イベント「CES Unveiled(CESアンベイル)」で2つのプロトタイプを紹介した。

 1つ目は、手や腕が不自由な人向けに開発された、スマート・メークアップ・アプリケーター「HAPTA(ハプタ)」。手や腕の動きに不自由を感じている人は、メークをする際、思い通りにいかないことがあるという。HAPTAはコンピューターによって動きが制御されたアプリケーションの先端に化粧品を付属させることで、化粧品を一定の水準で塗るためのサポートをする。

CESで展示された「HAPTA」
CESで展示された「HAPTA」

 同製品は、人間工学に基づいたマグネット式のアタッチメントを採用しており、360度回転、180度屈曲が可能。例えば口紅であれば使用中に塗る位置を維持したり、カスタマイズした設定により固定化して使用したりすることができる。3時間でフル充電できる内蔵バッテリーとデバイスの充電により、1時間の連続使用が可能だ。

 HAPTAは、米アルファベットの子会社でライフサイエンスとヘルスケアの分野でビジネスを展開する米ヴェリリーが開発した技術を採用する予定だという。同技術は、手や腕が不自由な人が自立して食事が取れるようにするため、食器を安定させ水平にするというもの。23年、ロレアル傘下の化粧品ブランド「ランコム」で、まずは口紅のアプリケーターから試験導入される予定だ。

HAPTAの利用イメージ動画。手の動きを回転させても先端の口紅の位置は固定されている

 2つ目は、数秒でカスタマイズされた眉毛メーク(アイブロウ)を実現する、電子アイブロウ・メークアップ・アプリケーター「L'Oreal Brow Magic (ロレアル・ブロウ・マジック)」。一般的に眉毛は、あらゆるメークの中でも難しいとされ、うまく描けないと悩みを抱える人は多い。実際アイブロウに苦手意識を持つ筆者も、もう何年もの間、月に1回はプロの眉毛スタイリストの元に通い整えてもらったり、メーク指導を受けたりしている。ロレアル・ブロウ・マジックは、そんな筆者のような悩みを抱える人や、「もっといろいろな眉毛の形やデザインを楽しみたい」と考える人に向けた商品だ。

ロレアル・ブロウ・マジック。左はスマートフォンアプリ、右はデバイス本体
ロレアル・ブロウ・マジック。左はスマートフォンアプリ、右はデバイス本体

 同商品は、2400個の極小ノズルと最大1200ドロップスパーインチ(dpi)の印刷解像度を持つ印刷技術により、正確な眉の形を数秒で顔面に描くというもの。また専用のスマートフォンアプリを用意し、ユーザーがその日の気分やファッションなどに応じて太さや形など、眉毛メークをカスタマイズできるオプションも備える。

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