
1年間の技術トレンドを見通す場であるデジタル見本市のCESが、リアル開催で復活した。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを通し、企業と顧客のコミュニケーションにどんな変化が生まれているのか。電通でイノベーション支援を手がける森直樹氏が、3年ぶりの現地取材を通した分析をお届けする。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2021年は完全オンライン、22年はハイブリッド開催だったCESが、米ラスベガスの会場で完全復活した。筆者が前回参加したのはコロナ禍前の20年だったから、3年ぶりとなる。この3年の間に、企業と利用者とのつながり、つまりコミュニケーションの方法にどんな変化が生じたのかという観点を持ちつつ、基調講演や展示内容を回った。
今回のCESの論点は「今後広がるとみられる景気後退の局面で、技術革新がどう貢献できるのか」だろう。まずは全体像をつかもうと、毎回恒例となっている主催者のCTA(全米民生技術協会)によるCESの見どころを紹介する講演に足を運んだ。その中で、CTAのリサーチ担当副社長のスティーブ・コーニグ氏は、景気後退局面こそ技術革新が起こり、社会や消費者体験を高次元に高めていくという考えを示した。
例えば、08年のリーマン・ショック後、09年以降は通信規格4G(LTE)とスマートフォンが核となり、社会の成長をけん引した。米有力紙によると6割以上のアナリストが景気後退を予測している23年はどうか? コーニグ氏は成熟した高速通信規格5Gの通信インフラを背景に、コンピューター間の連携、自動化システムといったBtoB(企業向け)のイノベーションが発展すると見る。
MoT(モノのメタバース)が次の時代を築く?
BtoC(個人向け)の分野ではメタバースの注目度が高いという。メタバースはまだ黎明(れいめい)期で、将来に向けた投資フェーズにすぎないという見方をする人も多いが、コーニグ氏は「多くの人々が思っているよりも実はメタバースは広がってきている」という。さらにMoT(The Metaverse of Things)という概念を示した。あらゆるモノがネットにつながるという概念のIoTと同様に、周囲のさまざまな機器やサービスがメタバースと連係していくという意味を込めているのだろう。
メタバースというとVR(仮想現実)のヘッドセットを使うという印象が強いが、パソコンやタブレット端末も3Dのバーチャル空間は利用できる。仮想店舗でのオンラインショッピングといった体験がさまざまな端末で、手軽に利用できるようになっていくという。その一方で、さらなる没入感を得られるようにするために、嗅覚や触覚を伝える技術も生まれつつあると解説した。
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