
長崎県にある動物園「長崎バイオパーク」を運営するバイオパーク(長崎県西海市)は、国内の動物園屈指の“SNSの使い手”だ。SNSごとの特性を見極め、「潜在層の認知拡大」「ファンとのエンゲージメント向上」などフェーズに分けて巧みにコンテンツを使い分ける。過去15年で最も来園者数が多かったという2022年は、TikTokをはじめSNSで情報発信をしてきた影響が大きい。キーマンが語る、長崎バイオパーク流SNSの使い分け方を紹介する。
TikTokで150万フォロワーを抱える長崎バイオパーク。実は同アカウントをフォローするのは、93%が海外在住者だ。日本人フォロワーが占める割合は、7%。国内に拠点を置く動物園としては珍しい比率と言えるだろう。
しかし、この割合は偶然そうなったわけではない。長崎バイオパークは外国人の来園者を増やしたいと考えている。そこで将来的な来園を見越し、海外在住のTikTokユーザーにフォローしてもらうためのさまざまな工夫を重ねてきた結果、圧倒的に海外フォロワーが増えたのだ。一方、日本人向けの情報が充実しているYouTubeは、日本人フォロワーの割合が全体の60~70%と多い。SNSを使い分けることでファンの絶対数を増やし、来園増という効果につなげている。
カバがスイカを食べる動画がTikTokでもヒット
長崎バイオパークのTikTokアカウントは、もともと2018年1月に開設した個人アカウントだった。「飼育員さんzookeeper」と名付けられた同アカウントを更新していたのは、現在もTikTokの運用を担当する、取締役CMO(最高マーケティング責任者)の神近公孝氏だ。すでに多くのSNSアカウントで一定の実績を出していたことから、今後伸びるのではないかと予測されていたTikTokの活用余地を見極めようと、実験的にアカウントを開設した。
公式アカウントに切り替えたのは、新型コロナウイルス感染症が発生した直後の20年4月。個人アカウントの頃から36万弱のフォロワーを抱える人気アカウントに成長していたことから、新型コロナ禍による休園期間中に情報発信を強化するため、公式アカウントとして運用することになった。
フォロワー数が大きく伸びるきっかけになったのは、カバが大口を開けて豪快にスイカを食べる様子を映したものだ。23年1月11日現在、5600万回以上再生されている。
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実はこのカバがスイカを食べる動画は、14年に長崎バイオパークがYouTubeにアップし、これまでに1億6000万回以上再生された大ヒットコンテンツを踏襲したものだ。TikTokでは「ASMR(自律感覚絶頂反応)」と呼ばれる、「聞いていると不思議と心地良い」という音に人気が集まる傾向にある。カバがスイカをバリバリと食べる音はまさにASMRにはうってつけだ。大きなスイカが瞬く間に食べられていく爽快さと相まって、TikTokでも一躍人気動画となった。
絶えないファンからの差し入れ 海外からも客が来るように
150万フォロワーを抱える長崎バイオパークのTikTokアカウントは、集客に大きく寄与している。前述の通り、22年の来園者数は過去15年で最高となり、客層にも変化が表れた。
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