「100年に一度」といわれる大変革期にある自動車産業の未来を読み解く新刊『モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質』(日経BP)。今回は筆者の木村将之、森俊彦がスクラムベンチャーズの創業者でありジェネラル・パートナーの宮田拓弥氏と対談。シリコンバレーと日本をまたいで活躍するベンチャーキャピタリストが見据えるモビリティの未来とは。

自動運転時代、車内はエンターテインメント空間になる?(写真/Shutterstock)
自動運転時代、車内はエンターテインメント空間になる?(写真/Shutterstock)

木村将之(以下、木村) 2023年1月に開催された世界最大のデジタル見本市「CES 2023」では、CASE(コネクテッド:Connected、自動化:Autonomous、シェアリング:Shared、電動化:Electric)技術それぞれが進展していましたね。特にソフトウエアやサービスを重視する車を指すキーワード「Software Defined Vehicle」が非常に話題となり、モビリティ産業のソフトウエア化の進展を強く感じました。

 宮田さんは、17年にシリコンバレーD-Labプロジェクトでモビリティ産業の見通しをうかがった際、すでにモビリティ産業がソフトウエア産業化すること、CASEのそれぞれの要素が群になって起こることを指摘されていました。そんな宮田さんは、今回のCESをどのようにご覧になりましたか。

宮田氏が協力したシリコンバレーD-Lab第1弾リポート(画像/Google. Tesla, Inc. Shutterstock)
宮田氏が協力したシリコンバレーD-Lab第1弾リポート(画像/Google. Tesla, Inc. Shutterstock)

宮田拓弥(以下、宮田) 確かにCASEの全要素が進展しているわけですが、それぞれの要素を考えるうえでは時間軸が大切です。米国ではEV(電気自動車)の販売競争が本格化しています。すでに米テスラはかなり前からマーケットに製品を投入しており、「モデルX」までは物理的な鍵がありましたが、「モデルY」からは完全にスマートフォンを利用した鍵になりました。シートの調整や車内エンターテインメントの設定を含め、ユーザーごとにパーソナライゼーションができる状況になっています。

森 俊彦(以下、森) テスラでいうと、OTA(Over-The-Air)という遠隔での無線ソフトウエアアップデート技術で、ある日、突然自動駐車ができるようになったことも過去話題になっていました。体験をアップデートする思想が今後は必須になってきますね。

宮田 テスラは購買体験も全く新しいものにしています。私も購入したのですが、ネットで車を注文すると、車がプレゼントのように家の前に置かれている。「あとはスマホを鍵にして運転してね」と言わんばかりです。今までにない体験に非常に興奮させられました。

車のゲームマシン化、その先にある差別化要素は?

木村 その購買体験は衝撃的ですね。今回のCESでは、自動運転時代が来た場合を想定し、米エヌビディアがエンターテインメント用の車内環境開発について発表を行い、ソニーも米国を中心に大人気のゲームタイトル「フォートナイト」を持つ米エピックゲームズとの連携を打ち出しました。一方、テスラはすでに5万を超えるゲームタイトルを持つ米スティームとの連携を発表しています。車内エンターテインメントの領域ではゲームが存在感を増していきそうですが、この分野でもテスラが先行しているとお考えですか。

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