2022年11月30日、12月1日にシンガポールで行われた「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」で実現した、韓国ドラマ『コネクト』の三池崇史監督と、日本オリジナル『ガンニバル』の片山慎三監督のスペシャル対談。後編では、アジア太平洋地域(APAC)で受けた刺激と日本の課題について話が及んだ。
――今回のイベントで他の国のクリエーターやキャストとの交流を通して、どんなことを感じましたか?
三池崇史監督(以下、三池) 各映画祭によっても雰囲気や集まる人も違うんだけど、ディズニーのイベントなんて、俺なんか多分誰とも話が合わないだろうから黙ってようと思っていたんですよ。昨日も壇上でミッキーマウスと一緒に、みんなで写真を撮ったじゃないですか。俺マジか! みたいな(笑)。本当にいろんな人たちが集まっているんだなあとしみじみ思いましたね。
片山慎三監督(以下、片山) あれはなかなかない体験ですよね(笑)。
三池 なんかドッキリの世界に近いようなもので(笑)。それがまあ、リアルなんだろうなっていう。
片山 僕は今回、改めて韓国の勢いとか自分の国の作品に対する誇りみたいなものをすごく感じました。嫉妬してしまうぐらい(笑)。「負けてられないな」という気持ちにもなりましたね。もちろん、三池さんのように韓国のスタジオと何か一緒につくるとか、そういったこともチャレンジして、どんどん吸収していきたいとも思いました。
また、『ガンニバル』をつくってみて、僕自身の課題として、次はCGやアクションの見せ方を改善したいなと。日本の映像業界全体で考えると、予算面も含めて、このあたりも韓国に若干後れをとっているところがあると感じています。
アジアでつくるべき、求められる作品とは
三池 韓国のエネルギーみたいなものを肌で感じると、日本においては若い世代でこいつヤバいな、本気で来ると俺らは仕事がなくなるぞといった迫力を感じる人材が少ないとは思いますよね。
かつてはデジタルに対するアレルギーみたいなものを持っている上の世代の人たちがいろいろと言っていたわけですが、1周回って、もうデジタルが当たり前という時代がきたわけで。だから、もしかしたら僕らには見えていないだけなのかもしれませんが、「なんかこいつすごいな!」と思わせる才能に出てきてもらいたい。もっとガシガシと新しい才能が出て来て、若い人が引っ張っていかないとダメになっていく業界だと思うので。
もちろん、片山さんも若い世代のすごいやつなんですよ。ただほら、ビジュアル的に、そう僕と遠くには感じないので(笑)。
片山 そうですね、新人と言われつつも年齢もそれなりにいってますし(笑)。
三池 いや、年齢じゃなくて、なんかね、存在感が親戚にいそうじゃないですか(笑)。
片山 三池さんも僕も大阪で出身が同じなんです。(三池のほうを向いて)あと、ラグビーをやってらっしゃったんですよね? 僕も高校の頃にラグビーをやっていたので、割と近いところがあるのかなと自分も感じています(笑)。
三池 ラグビーは中学校でやっていて、高校であまりにもレベルの高いところに行っちゃったので、こりゃもうダメだと一瞬にして諦めましたけど(笑)。ただ、何かを諦めるときってチャンスなんですよ。「こんなはずじゃなかったのに」と感じたときは、違う道に行かざるを得ないわけですから。僕は監督になるためにそこまで計画性があったわけじゃないけれど、そんなふうにして人って、どこかにたどり着くんだろうなとは思いますね。
――今回の発表では日本と韓国だけでなく、アジア全体としてインドネシアやオーストラリア&ニュージーランドなどの新作でもスリラーやホラーといったジャンルの作品が目立ちました。
三池 あらゆるジャンルの多様な作品があふれている世の中において、動画配信サービスで、特にアジアでつくる作品に関しては、そこに特化すべきじゃないかという流れはあるんじゃないのかなと。とりあえず今は、そこが求められているという感じはします。
片山 僕もそれはあると思います。例えば制作予算のこともあると思うし、あとは世の中の空気として、新型コロナウイルス感染症の影響もありますよね。あまり現実的な作品を見せられるよりも、少しフィルターが入って、その向こう側にある世界を描いたほうが、見る側にも受け止める余裕が生まれるのではないでしょうか。