「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」(2022年11月30日~12月1日、シンガポール)で圧倒的なコンテンツ力を見せた韓国(前回参照)。その総括&分析と、国民的俳優チェ・ミンシク主演の最注目作『カジノ』の監督&キャスト座談会を、一部本誌独占コメントで紹介する。

(左から)今回インタビューに答えてくれた『カジノ』出演のイ・ドンフィ、カン・ユンソン監督、ホ・ソンテ
(左から)今回インタビューに答えてくれた『カジノ』出演のイ・ドンフィ、カン・ユンソン監督、ホ・ソンテ

 2022年11月30日~12月1日、シンガポールのマリーナベイ・サンズで開催された「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」の冒頭、登壇したウォルト・ディズニー・カンパニー・アジア・パシフィックのコンテンツ&デベロップメント バイスプレジデントのジェシカ・カム-エングル氏は、アジア太平洋地域(APAC)について「ローカルコンテンツに費やす時間が90%の地域」と語り、ローカルコンテンツの重要性を強調。また、昨年の第1回の開催から2023年までに50以上の作品を目指して1年以上がたち、同社のAPACにおける計画は順調に進んでいると語った。

 続けて、韓国の新作ドラマ『コネクト』と『カジノ』のタイトルやBTSなどのK-POPを具体的に挙げ、韓国の大成功について言及。同氏の前に登壇した同プレジデントのルーク・カン氏も、韓国の作品がAPAC市場において、非常に良い成績を収めていることを述べていた。このような高評価を受ける韓国コンテンツの勢いは、今回の全イベントと翌日に行われた記者会見や個別取材を通して、ますます強く感じられた。

国民的俳優を全員で世界へ押し上げる

 リアリティーショーから巨費を投じたドラマまで、幅広く強力なラインアップを擁する韓国作品のなかでも、とりわけ韓国が力を入れていると考えられる作品が『カジノ』だ。

 『カジノ』は、貧しい幼少期を過ごした主人公チャ・ムシクが、賭博ビジネスから頭角を現し、カジノ経営で韓国カジノ界のトップにのし上がる。しかし、ある事件をきっかけにすべてを失う。そこからどんな犠牲を払ってでも自らの人生を取り戻すために、再び命懸けのゲームに身を投じて再起を図るクライム超大作だ。

 『オールド・ボーイ』などの映画に出演する韓国の国民的俳優、チェ・ミンシクが25年ぶりにテレビシリーズに主演することが大きく報じられている本作。ドラマ『私の解放日誌』のソン・ソック、映画『エクストリーム・ジョブ』のイ・ドンフィ、『イカゲーム』のホ・ソンテといった実力派の豪華キャストが競演。監督・脚本は映画『犯罪都市』のカン・ユンソンが手掛けている。

主人公のチャ・ムシク(チェ・ミンシク)
主人公のチャ・ムシク(チェ・ミンシク)
ソン・ソック(右から2番目)が演じるのは、フィリピンに逃れたチャ・ムシクを追う警察官オ・スンフン
ソン・ソック(右から2番目)が演じるのは、フィリピンに逃れたチャ・ムシクを追う警察官オ・スンフン
チャ・ムシクの義弟で右腕でもある、ヤン・ジョンファル(右/イ・ドンフィ)
チャ・ムシクの義弟で右腕でもある、ヤン・ジョンファル(右/イ・ドンフィ)
ホ・ソンテが演じるソ・テソク
ホ・ソンテが演じるソ・テソク

 最初の2話は、韓国の大田(テジョン)で新聞を売りながら育った貧しい少年時代を描く。そこからチャ・ムシクの波乱の人生は、韓国からフィリピンのきらびやかなカジノの世界へと物語の舞台を移していく。韓国のある地域、ある時代を切り取った非常にドメスティックな状況を描きながら、東南アジアへと壮大な広がりを見せる展開は、自分たちの文化を描くことと同時に、より広く東南アジアの魅力を世界に発信する作りだ。

 韓国が本作のPRにおいて今回とった戦略は、韓国の狙いを明確にあらわしているように思える。作品のプレゼンテーションに登壇したカン・ユンソン監督、イ・ドンフィ、ホ・ソンテは、韓国が誇る偉大な俳優チェ・ミンシクの連続ドラマ復帰作であることについて力強く語った。ユンソン監督は、「ミンシクが、私が執筆した脚本を読み、主人公チャ・ムシクのキャラクターに魅了されて出演を即決した」というエピソードを披露。韓国の国民的俳優に対する誇りと敬意が最大限に感じられた。それに対する、会場の韓国の記者たちの反応も熱量があった。

(左から2番目より)会見に登壇したホ・ソンテ、カン・ユンソン監督、イ・ドンフィ
(左2番目より)会見に登壇したホ・ソンテ、カン・ユンソン監督、イ・ドンフィ

 イ・ドンフィ、ホ・ソンテらはフィリピンでのロケで、いかに現地スタッフが素晴らしい働きをしてくれたのかを強調。会場にはCNNフィリピンほかフィリピンからの記者たちも参加しており、同国ほか東南アジアの記者たちのテンションも一様に上がっていたように感じられた。翌日の個別インタビューで、ユンソン監督は「最初からストーリーは海外を舞台にしていたので、あえてフィリピンで物語を展開させようとしたわけではない」と述べていたが、結果としては対東南アジアへのアピールになっていることは確かだろう。

一方で、イベント2日目の『カジノ』の記者会見は、韓国の記者だけの独占会見とされた(※)。まずは自国への特別な配慮を示し、国全体で作品を盛り上げる機運を作る。そして出演者やクリエーターも、韓国のコンテンツが、グローバルプラットフォームであるディズニープラスのAPAC地域をけん引しているいう自負を強く持っている。そんな印象は、2日目に行われたインタビューからも強く感じられた。

※後日、チェ・ミンシク、ソン・ソックらも加えた監督・キャスト7名が登壇する記者会見がYouTubeで海外の記者も視聴できる形で限定配信された。

『イカゲーム』ホ・ソンテが語る誇り

 『イカゲーム』で一躍国際的な注目を集めたホ・ソンテは、自分の体験を通して、次のように語った。

 「実際、『イカゲーム』に参加して感じたことでもあるのですが、今回の『カジノ』でも同じことを感じています。非常に誇りに思っていることでもあります。それは、“韓国でトップになれば、世界のトップになる”ということです。ですから私は、様々な場でこうした感想を述べるとき、積極的に関係者やスタッフの方々を勇気づけられるようなコメントを自ら発するようにしています。韓国のトップが世界のトップにつながるということを私は実感しているし、そのことに対する感謝を込めて自分の体験を語っています。そういう時代が今来ているのだということを、身をもって体験し、実感しているところです」

 この規模での世界同時の動画配信サービスの大作シリーズに出演するのは今回が初となるイ・ドンフィも、海外を強く意識していた。

 「ホ・ソンテさんが出演した『イカゲーム』などを考えると、本当に昔に比べて不思議な世界になったなと思います。以前だったら海外デビューするというと、現地へ出向いていって、向こうのスタッフと作業をしなければいけなかったのが、『カジノ』もそうですが韓国語で、韓国人のスタッフで作っても、海外のお客様に届けることができるようになりました。本当に一瞬にして、全ての壁を越えて海外のお客様にも作品をお見せできるというのは、私にとって今回の作品がほぼ初めての経験です。非常に不思議な感覚で、まだ実感が沸かない部分もありますね」

『カジノ』/ディズニープラス スターにて12月21日(水)より独占配信開始。(C)2022 Disney and its related entities
『カジノ』
ディズニープラス スターにて12月21日(水)から独占配信開始。(C)2022 Disney and its related entities

 既報の通り、イベント初日のディズニーやマーベル、「スター・ウォーズ」などの作品が紹介されたパートでは、ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』のパク・ソジュンが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズの映画『The Marvels(原題)/ザ・マーベルズ』(23年7月28日全米公開)でハリウッドデビューや、ドラマ『イカゲーム』でプライムタイム・エミー賞主演男優賞を受賞したイ・ジョンジェの「スター・ウォーズ」の実写ドラマシリーズ『The Acolyte(原題)/アコライト』への出演が発表された。

 また『カジノ』の後も、韓国の人気スター、チ・チャンウクと『イカゲーム』で世界に注目されたウィ・ハジュンが共演する韓国ドラマ『The Worst of Evil(原題)/ザ・ワースト・オブ・イーヴィル』などが控えている。1980年代の韓国を舞台に、悪名高い国際麻薬組織に潜入する警察官が奮闘するクライムアクション大作だ。既に国際的な知名度を得た俳優を起用しながら、韓国の才能あるトップスターを世界に知らしめていく。

 幅広いジャンルの多様な作品を通して、2023年も韓国はオリジナルコンテンツで世界レベルのヒット作を目指す。

(C)Disney
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