ウォルト・ディズニー・カンパニー設立100周年を迎える2023年に先立ち、11月30日~12月1日にシンガポールで行われた「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」。連載第2回では、圧倒的な存在感を放つ韓国、アジア太平洋地域(APAC)オリジナル コンテンツ戦略担当のキャロル・チョイ氏への独占取材から見えた、日本の可能性と課題とは。

(左)2日目の韓国『コール・イット・ラブ(原題)』のプレスカンファレンスでのキム・ヨングアン。(右)キムとイ・ソンギョン、イ・グァンヨン監督とともに登壇した
(左)2日目の韓国『コール・イット・ラブ(原題)』のプレスカンファレンスでのキム・ヨングアン。(右)キムとイ・ソンギョン、イ・グァンヨン監督とともに登壇した
『コール・イット・ラブ(原題)』ディズニープラス「スター」で2023年配信予定。(C)2022 Disney and its related entities
『コール・イット・ラブ(原題)』ディズニープラス「スター」で2023年配信予定。(C)2022 Disney and its related entities

 2022年11月30日、12月1日の2日間にわたり、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズで開催された「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2022」。ディズニー・カンパニーが今後予定している劇場作品と動画配信作品を紹介するイベントで、前回紹介した日本に続き、作品の質の高さを感じさせるインドネシア、世界的に知名度のある俳優が共演するオーストラリア&ニュージーランドが新作コンテンツを発表。そして最後に圧巻の存在感を見せつけたのは韓国だった。

 韓国はドラマ作品に加えて、BTSやNCT 127などK-POPボーイズグループのドキュメンタリー作品、バラエティ番組を含む13タイトルを発表した。ライブアクションからは、12月に配信を控えるドラマ『コネクト』『カジノ』、そして新たに発表された『コール・イット・ラブ(原題)』の主要キャスト、監督らが登壇し、作品について見どころなどを語った。

インドネシアからは、『Tira』『MENDUA』などの作品から俳優やプロデューサーらが登壇した
インドネシアからは、『Tira』『MENDUA』などの作品から俳優やプロデューサーらが登壇した

 また午前の部では、大ヒットドラマ『梨泰院クラス』やアカデミー賞を席巻した映画『パラサイト 半地下の家族』にも出演していたパク・ソジュンが、MCUシリーズの映画『ザ・マーベルズ(原題)/The Marvels』(2023年7月28日全米公開)でハリウッドデビューするという情報が解禁に。「スター・ウォーズ」の実写ドラマシリーズ『The Acolyte(原題)』への出演が発表されていた、ドラマ『イカゲーム』でプライムタイム・エミー賞主演男優賞を受賞したイ・ジョンジェからはビデオメッセージが届いた。

コメントを寄せたイ・ジョンジェ
コメントを寄せたイ・ジョンジェ

 翌日に行われた『コネクト』や『カジノ』のキャストへの個別インタビューでも、「韓国のトップになれば、世界のトップになれる」という自負や誇りを各人が口にしていた。イベントの冒頭ではウォルト・ディズニー・カンパニー・アジア・パシフィック プレジデントのルーク・カン氏が、『サウンドトラック#1』や『IN THE SOOP フレンドケーション』といった韓国作品がAPACの市場において非常によく視聴された実績に言及。続けて「APAC独自のストーリーが、ディズニーの次の100年の重要な柱となることを望んでいる。今回はそのお披露目になる」と語った。その言葉通り、APACのなかでも韓国作品の強力なラインアップからは、ここからさらにパワーアップしていくような熱量が感じられた。

キャロル・チョイ氏が語るAPACの進化

 イベント2日目に個別インタビューに応じた、APAC オリジナル コンテンツ戦略担当エグゼクティブ・バイスプレジデント キャロル・チョイ氏は、この1年のAPACの成果について次のように振り返った。「私たちのコンテンツを大勢の人がいかに早く見つけ、いかに引き付けているかが、視聴時間の多さと最初のストリーミング量の多さで分かる。それに私たちは非常に励まされている」。

イベントに登壇したAPACオリジナル コンテンツ戦略を担当するエグゼクティブ・バイスプレジデントのキャロル・チョイ氏。2020年3月にウォルト・ディズニー・ジャパンの代表取締役に就任。それ以前にウォルト・ディズニー・コリアのマネージング・ディレクターを務め業績を伸ばした実績を持つ
イベントに登壇したAPACオリジナル コンテンツ戦略を担当するエグゼクティブ・バイスプレジデントのキャロル・チョイ氏。2020年3月にウォルト・ディズニー・ジャパンの代表取締役に就任。それ以前にウォルト・ディズニー・コリアのマネージング・ディレクターを務め業績を伸ばした実績を持つ

 さらに、APACにおける日本のプレゼンスについては「日本のストーリーテリングには創造的なエネルギーがあり、映画撮影技術も美しく、文化的な側面も日本のコンテンツを通して見せることができる」とし、今後の世界を舞台とした展開に多くの可能性があることを強調した。

 一方で、今の韓国の勢いを目の前にして、日本の課題も示唆した。

 「韓国の市場(発の作品)はもう少し長い歴史や実績があり、特定のジャンルとしてうまく機能していることが分かっている。また、韓国だけでなく世界中で知られているスターが多くいることも大きい。一方、日本は(世界に向けてのコンテンツ作りを)始めたばかり。まだ表面化していないが、私たちは『ガンニバル』(連載第4~5回で紹介)について多くの自信を持っている。世界クラスのストーリーの質、ストーリーテリングを用いてトップタレントと協力することで、私たちが望む場所に到達できることを願っている」(チョイ氏)

 競争が激化する動画配信サービスの市場で、鍵を握ると考えられるAPAC地域の動向に注視したい。

第3回に続く。

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