
東京・豊島の椎名町にあるケーキ店「bilson rollers(ビルソンローラーズ)」には、近隣だけでなく、地方や海外からも客が来る。その秘密は、10年前から活用している「YouTubeチャンネル」にある。チャンネル登録者が32万人を超えるまでに成長し、動画をきっかけとした来店客の増加につながっている。さらに、動画を通じた広告収益という副収入を得ることで、店の利益率の向上にも貢献している。
「YouTubeチャンネルを開設したことで、『映像が商品になる』というコンテンツビジネスを展開しているような感覚がある。投稿した動画経由の集客や、広告が店の利益の一部になっており、事業に影響を与えている」
こう語るのは、ケーキ店のbilson rollers(以下、ビルソンローラーズ)を営むbilson(東京・豊島)の門傳智彦社長だ。同店は2012年にYouTubeチャンネルを開設し、パティシエの学習用の動画を投稿し始めた。それが今や、チャンネル登録者は32万人を突破。動画をきっかけに北海道や九州などからも来店客が訪れる。新型コロナウイルス禍前は、韓国やオーストラリアなどの海外からも、動画の視聴を機に客が来店するほどの人気チャンネルへと成長した。
ビルソンローラーズがYouTubeを活用した目的は当初、パティシエの学習のためだった。「ケーキ作りは作業の工程が多く、ベテランのパティシエでもケーキ作りの途中で工程を確認することはよくある」(門傳氏)。その際の振り返りをしやすくするために、動画を用意したといういきさつだ。
YouTubeチャンネルの運用には特に注力しておらず、年に数回動画を上げるといった程度だった。しかし、その頃、グーグルから招待を受けて参加したYouTube関連のセミナーをきっかけに門傳氏の考えは一変する。
動画から広告収入が得られた衝撃
セミナーに参加した当時は、ユーチューバーのHIKAKIN(ヒカキン)が人気を博し始めた頃。「好きなことで、生きていく」という、YouTubeのテレビCMのキャッチコピーが記憶に残っている読者も多いだろう。グーグルは動画クリエイターの育成強化を狙い、チャンネル登録者が1000~1万人のクリエイターを対象にセミナーを開催していた。
門傳氏もその条件に該当し、セミナーに参加することにした。セミナーには当時人気ユーチューバーの1人だったMEGWIN(メグウィン)が登壇し、YouTubeで再生されやすい動画の作り方を解説した。
門傳氏はそのセミナーで、YouTubeの投稿動画に広告を付けられることを学んだ。セミナー受講後さっそく、これまで投稿していた動画に広告を付けてみたところ、3000円ほどの収入になった。「過去に上げていた動画が見られるだけで、収入を得られることに衝撃を受けた」(門傳氏)。これをきっかけに「本気を出してみよう」(門傳氏)と考え、週に1本、月に3~4本の頻度で動画を上げていくことにした。
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