YouTubeマーケ完全マニュアル 第6回

中小企業がYouTube専任社員を採用する。そんな思い切った決断をしたのが、家電メーカーのライソン(大阪府東大阪市)だ。同社はブランドのファン育成を狙い、YouTubeチャンネルを開設。たった1人の専任社員を中心に動画の投稿を始めたものの、2022年5月時点で登録者は1000人に到達する程度。「25年にチャンネル登録者1万人」という目標には、程遠い状況だった。それから約半年間がたち、22年12月時点の登録者は何と24万人超だ。この半年間で、ライソンのチャンネルに一体何が起こったのだろうか。

ライソンは、「2025年にチャンネル登録者1万人」という目標を掲げて、YouTubeチャンネルの運用に取り組んでいる。現在は目標を達成し、登録者は24万人を超えた
ライソンは、「2025年にチャンネル登録者1万人」という目標を掲げて、YouTubeチャンネルの運用に取り組んでいる。現在は目標を達成し、登録者は24万人を超えた

 製造業の数が国内で5番目に多く、「モノづくりの町」として知られる大阪府東大阪市。現在放送中のNHKの連続テレビ小説「舞い上がれ!」の舞台の1つにもなっている。そんな東大阪に、「一点突破」を掲げる家電メーカーがある。

 その名はライソン。即席焼きそば「ペヤング」専用ホットプレート「焼きペヤングメーカー」や、58秒でトーストを焼くことができるとうたう「秒速トースター」、ギンビス(東京・中央)のロングセラー商品「たべっ子どうぶつ」のキャラクターのカステラを焼くことができる「たべっ子どうぶつカステラメーカー」など、奇想天外な家電を開発しては、テレビやネットで話題を呼んでいる。

 その同社がYouTube活用に力を入れ始めている。きっかけは、2020年に遡る。同年、中長期ビジョンを掲げ、25年において会社のあるべき姿を探った。その中で重視したことの1つがSNSの活用だった。ライソン商品部広報の三上紅美子氏は、「SNSを通じて消費者の声を聞きたかったのが、最大の理由」と振り返る。

 SNSに力を入れる。その発想の下、中長期ビジョンで掲げた目標がある。それが、「25年までにYouTubeの登録者1万人」というものだった。

 その数字に根拠はない。とはいえ、ライソンの商品のようなエッジの立った商品は固定ファンがつきやすい。そうしたファンとのつながりを示す1つの指標として、1万人という目標を掲げたのではなかろうか。三上氏は「“友達100人できるかな”といった感覚だったのではないかと思う」と話す。

 根拠はなくとも、会社としての目標は目標だ。これを機にYouTubeの活用を本格化させた。しかし、チャンネル登録者数は伸び悩み、22年5月時点では1000人程度にとどまっていた。

 それから約半年がたち、現在は目標としていた1万人を大きく上回る24万人が登録している。そこに至るまで、一体どのような取り組みをしたのか。その軌跡をたどってみたい。キーワードは、「人軸のコミュニケーション」「短尺動画に振り切る方針転換」「コラボ動画」だ。

営業出身、素人同然の社員をYouTube専任に

 YouTube活用に注力していく上で、ライソンが行ったのが、YouTubeチャンネルの運用に専念する社員「動画担当」の採用だ。ライソンは商品部と営業部からなる、社員全30人の小規模で展開する企業。「これからは動画で消費者とつながっていく時代」(三上氏)と認識しながらも、それぞれが本業を抱えながら片手間で動画制作を行うのは難しいと考えた。

 「あわよくば、動画撮影、編集、ディレクション、そして出演もできるような人物を探していた」と三上氏は語る。動画担当の社員募集には、動画制作の経験者などその道に精通した候補者も多々集まっていたという。

 ところが、選考を通じて実際に採用に至ったのは、前職が営業で動画制作は素人同然の佐藤大将氏だった。佐藤氏は「世界を知りたい」という理由から、前職で勤めていた会社を辞めて、オーストラリアに遊学していた経歴がある。その際に、自身が現地でも元気に過ごしていることを周囲に伝えるために、YouTube動画を撮影していたそうだ。内容は、自身が筋肉トレーニングをしたり、コアラを探しに行ったりする様子を収めた、とりとめのないものだった。

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