
動画配信サービス「YouTube」は国内の月間利用者が7500万人を超え、国内最大級の動画メディアに成長した。利用者の増加に伴い、企業にとっても極めて重要な消費者接点になっている。企業はYouTubeを主に2つの方法で活用できる。1つは企業が自社で「チャンネル」を設置し、動画を配信する方法。もう1つは「広告」だ。本特集ではグーグル、支援会社、活用企業への取材を通じて、チャンネルと広告でそれぞれの有効活用法をまとめ、「YouTubeマーケ完全マニュアル」として解説していく。
YouTubeは、国内の月間利用者が7500万人を超える(2022年10月時点、出典:ニールセン デジタルコンテンツ視聴率2022年10月)、巨大動画プラットフォームだ。1人あたりの平均月間利用時間は、42時間46分02秒(同)と非常に長い。もはやテレビと並び、生活に浸透した動画メディアと言える。
若年層の利用者が目立つSNSプラットフォームも多い中、YouTubeは利用者の年代が幅広いのも特徴だ。下表は約7500万人のYouTube利用者の性別・年代の内訳だ。若年層から65歳以上の年配まで、幅広い層が利用しているのが分かる。
マーケティング調査会社のヴァリューズ(東京・港)が22年8月に国内の20歳以上の男女3384人を対象に実施した、YouTube利用に関する調査では、20代、30代の約3割が、休日に「3時間以上」YouTubeを視聴しているという結果となった。若年層の利用時間の長さが際立っているが、この調査でもすべての年代で「ほぼ毎日利用する」という回答が1位となっており、消費者の生活に浸透していることがうかがえる結果となった。
それだけ消費者が時間を費やすサービスゆえに、企業のマーケティングプラットフォームとしても欠かせない存在だ。その方法は大きく2つに分けられる。1つは「チャンネル」の活用だ。他のSNSと同様に、YouTubeでも企業が公式のチャンネルを設けて、動画を掲載し、コミュニケーションに活用できる。
チャンネルは既存顧客とのリレーションシップを高め、ファン化を加速させるSNSとも近しいサービスだ。チャンネルには動画が掲載された場合に通知を受け取って、見逃しを防ぐ「登録」機能がある。SNSのフォローと同様の機能で、この登録者数はYouTubeチャンネルの効果を測る1つのバロメーターになる。
動画配信に特化したプラットフォームだけに、一般的なSNSの活用に比べれば企業がコンテンツを配信し続けるハードルは高い。そのため、企業のチャンネルで登録者数が多いのは音楽やアニメなどの映像と相性のいいエンターテインメント事業者が中心だ。他のSNSでは数十万人のフォロワーを抱える大手企業でも、YouTubeとなるとテレビCMや販促動画の配信にとどまり、チャンネル登録者数は数万人程度というケースは多い。
裏を返せば、他のSNSよりもコンテンツ制作が難しいだけに、まだまだ多くの企業にチャンスが残された空白地帯とも言える。チャンネルで登録者数が43万人を超える(22年12月16日時点)釣り具メーカーのシマノや、同じく20万人を超える(同)書店チェーンの有隣堂(横浜市)のように、自社製品や扱う商品を活用した動画コンテンツをつくり、登録者を集める企業も現れている。
▼関連記事 老舗書店・有隣堂の破天荒YouTube戦略 8カ月で登録者が27倍に「一時的に認知を広げる場合は動画単体の閲覧数が重要になるが、チャンネルを運営するうえでは中長期的にファンとの関係性を築いていくために活用するという発想が重要になる」とグーグルのYouTube コンテンツパートナーシップ上妻真木氏は言う。動画コンテンツは制作のハードルが高い半面、多様な情報を伝えられる強みがある。登録者が増えることで、継続的により深い情報を閲覧してもらえる可能性が広がる。
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