日本に響いたキャッチコピー&CM 2022 第4回

鮮やかな画像と、メッセージ性の高いコピーが印象的なショッピング施設「ルミネ」の広告。2022年秋冬キャンペーンのクリエーティブを手掛けたのは、ヘアケアブランド「パンテーン」の「#この髪どうしてダメですか」や、大人用紙パンツブランド「アテント」の「#常識をはきかえよう」などを打ち出した、コピーライター・クリエーティブディレクターの細川美和子氏だ。メッセージ性の強い広告を多く発信する同氏が、今秋のルミネの広告を完成させるまでの背景を聞いた。

ルミネ・ニュウマンの2022年秋冬キャンペーン「“IT’S NEW” WEEK 2022 AW」の広告
ルミネ・ニュウマンの2022年秋冬キャンペーン「“IT’S NEW” WEEK 2022 AW」の広告

 「この秋も、100年先も、ワクワクしていたい。」。このコピーを見て、どのような印象を受けるだろうか。コピーライター・クリエーティブディレクターの細川美和子氏が2022年に手掛けた、ルミネとニュウマンの22年秋冬キャンペーン「“IT’S NEW” WEEK 2022 AW」のコピーだ。

 秋冬シーズンの始まりを盛り上げるこのキャンペーン。実はもう1つ「来店者が長く愛せる服を見つけられるように、新しい買い方を提案していく」というテーマも込めた。

 キャンペーンにはルミネとニュウマンに入る約500のショップが参加し、例えば先行受注会を開催したり、セルフ骨格診断シートを館内に用意したりする。先行受注会を行うことで、受注枚数以上の服の生産が必要なくなり廃棄を減らせる。セルフ骨格診断で似合う服を選ぶ基準を持つことができ、本当に似合う長く着られる商品を買うことにつながる。まさに「新しい買い方の提案」だ。

 このキャンペーンには、継続性のある事業にも目を向けていきたいというルミネとニュウマンの意識が込められている。だからコピーは、「この秋」だけではなく、「100年先も」。今だけのファッションを楽しんでもらうのではなく、これからのファッションのあり方をショップや来店者と共に考えることで、さらにファッションの楽しみ方が広がる、そうした思いを込めたコピーでもある。

 コピーを書くにあたり、ルミネ・ニュウマンの担当者とオリエンテーションを行ったという細川氏。継続性ある事業に目を向けていきたいという両ブランドの姿勢に加え、来店客と向き合う姿を「いいな」と思ったという。

キャンペーンコピーからは「新しい買い方の提案」に取り組むルミネ・ニュウマンの姿勢が具体的に伝わる
キャンペーンコピーからは「新しい買い方の提案」に取り組むルミネ・ニュウマンの姿勢が具体的に伝わる

 行動制限が緩和された22年。ルミネやニュウマンのリアル店舗にも徐々に客足が戻る中、久々に訪れた客から「やっぱりショップで服を買うのって楽しい」というコメントが寄せられていた。ショップスタッフにとっても来店者と直接コミュニケーションを取るのは久々のこと。スタッフはそうしたコメントに励まされていたのだという。

 「スタッフさんがオリエンテーションの中で、お客様からの声に励まされていることをもっと伝えていきたいというお話をしていて、素晴らしいなと思った。お客さんが喜んでくれることでスタッフさんのやる気が出て、またお客さんが喜んでくれる、そういう循環についてコピーを通してもっと知ってもらい、後押ししたいと思った」と細川氏は話す。

 この言葉通り、細川氏が目指したのは、生活者と企業どちらにもエールになるコピーだ。「ルミネ・ニュウマンにはこの秋の買い物を楽しんでもらうだけじゃなくて、長くファッションを愛していける土台がある世界をつくっていきたいという思いがあった。ただイベントがあることを知らせるだけじゃなく、その奥にある覚悟やお客さんへの思いを知ってほしかった。企業の思いを伝えるコピーを書くことで、お客さんが企業の考え方や取り組みのファンになり、その企業を応援するような気持ちで買い物をしてもらえるようになったらいいなと思う。思いを持った企業からは、お客さんも気持ちよく商品を買うことができるし、そうしたお客さんの応援の気持ちと消費はショップで働いている人の励みになって、いい循環が生まれる。この瞬間に物を売るだけではなく、長い視点を持ってコピーを書きたい」(細川氏)

細川 美和子 氏
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
2021年末に電通から独立、クリエーティブ・ディレクター・コレクティブ(つづく)を設立。長く愛され続ける物語のあるブランドづくりを志す。言葉を中心に、広告とPR、マスとソーシャルを掛け合わせ、世の中と良い関係をつくるための挑戦を続けている。最近の仕事は、アテント「#常識をはきかえよう」、パンテーン「#この髪どうしてダメですか」、東京ガス「家族の絆シリーズ」など。国内外で受賞多数。審査員としても、ACCのフィルム部門審査委員長やブランデッド・コミュニケーション部門審査員、TCC審査員、カンヌライオンズ・フィルム部門審査員などを歴任

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

14
この記事をいいね!する