
「桃ちゃん、浦ちゃん、金ちゃん」でおなじみのKDDI/auの「三太郎」シリーズが、CM総研が発表する2022年に最もCM好感度が高かったブランド「BRAND OF THE YEAR」に選ばれた。2015年の放送開始以来8年連続、auはCM好感度1位を獲得し続けている。なぜこのシリーズはこれほどまでに好感を与え、そして長く愛され続けているのか。背景にあるクリエーターの工夫に迫る。
KDDI内のブランド「au」は、8年連続CM好感度1位を獲得している。auといえば「三太郎」シリーズでおなじみ。この三太郎シリーズの放送開始が約8年前の2015年ということを踏まえると、三太郎がauのイメージを大きく向上させたと言っても過言ではないだろう。
この三太郎シリーズ生みの親が、クリエーティブディレクターの篠原誠氏だ。篠原氏によると、三太郎シリーズが始まった8年前は、ちょうどiPhoneの取り扱いがソフトバンク以外の通信キャリアでも始まった時期。大手であるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは、価格や提供サービスでほぼ横並びの状態だった。そんな中で生活者から選んでもらえるブランドになるにはどうすればよいか。
「やはりそこには『好感』が必要だ」と、篠原氏は言う。「サービス内容が大差ない状態の下では、人は何となく好きなほうを選ぶ」からだ。
当時、通信キャリア大手3社をそれぞれ思い浮かべたとき、篠原氏は業界1位だったNTTドコモには「安心・安全」、「お父さん犬」が登場する「白戸家」のCMシリーズで好感度1位を取り続けていたソフトバンクには「少しやんちゃで面白いイメージ」を持っていたという。それに対して「auは2番手で、音楽に強くて何となくフレンドリーという印象はあっても、これという確固としたイメージがなかった」と振り返る。
クリエイティブディレクター
そこで篠原氏がauのために考えたのが、「おもかわいい」というコンセプトだった。篠原氏はおもかわいいを「人物に例えると、すごく真面目なわけでもかっこいいわけでもない、なんならちょっとダサいかもしれない、でもその人がいると何となく場が盛り上がる、輪の中心にいて老若男女から好かれる、そんな存在」と表現する。「そういった何となく好感を持たれるポジションってある気がしていて、auはそういう存在になれると思った」(篠原氏)
auの当時のスローガンは「あたらしい自由。」。「あたらしい自由とは、既成概念を壊して進むといった意味合いを含むと考え、そこから思いついたのが、誰もが知る『昔話』の概念を壊して再構築することだった」(篠原氏)。正義のヒーロー桃太郎は、みんなが知る桃太郎より少しやんちゃに、好青年の浦島太郎はなんだか少し愚鈍、力持ちで快活なはずの金太郎は泣き虫に。「あたらしい自由」の発想と、おもかわいいのコンセプトを掛け合わせ、三太郎を誕生させた。
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