
デザイン経営やテクノロジーへの理解がますます問われるようになった今、デザイナーに必要なスキルとは何か。博報堂のDXチームhakuhodo DXDを率いる入江謙太氏に、これから求められるデザインとデザイナーについて聞いた。
hakuhodo DXD チームリーダー
――入江さんは、テクニカルディレクターやアートディレクター、UXストラテジストなど各分野のプロフェッショナルが一体となり、ブランディングやサービスデザイン、新規事業開発などを手掛けるプロジェクトチームhakuhodo DXD(以下DXD)を率いています。テクノロジーが進化し続ける今、どういったデザインが求められているのでしょうか。
入江謙太氏(以下、入江)これまで企業やブランドのシンボルであるロゴマークは、レギュレーションどおりに使用するもので、勝手に動かしたりできない強固なデザインが一般的でした。しかし、デジタル化が進んでいる今は、ポスターやカタログなどオフラインのメディアに加え、Webサイトやアプリ、SNS、動画広告、バナー広告など、ロゴマークはさまざまなメディアで展開されるので、デザインに関わる人たちが「使いやすいデザイン」であることも重要です。使いやすいデザインとは、メディアの特性によってアレンジが可能でありつつ、印象は変わらないもの。柔軟なデザインが必要とされる局面は、増えていると思います。
デザインの体験方法も、紙メディアとデジタルメディアでは違います。グラフィックは「見て感じる」ものですが、デジタルのデザインは「触って体験する」ものです。例えばスクリーン上のデザインは、顧客データを獲得したり蓄積したりするための「入り口」なので、ボタンをクリックしたら、その人は「購入意欲がある」「関心がある」とデータ上では読み取られる。つまり、スクリーン上のデザインは、顧客の分析やマーケティングに深く関与するものなので、そのことは常に意識しておく必要があります。
デザインの領域が広がっている中で、企業やブランドのビジョンも含ませながら世界観をしっかりつくり込めるのが、今の時代のアートディレクターだと思います。DXDのアートディレクターは、広告や商品のパッケージなどのグラフィックデザインだけでなく、サービスや体験のデザインなど、デジタルのオンラインとアナログのオフラインをまたぎ、トータルで手掛けています。
クライアントに伴走して分かること
――デザイナーが考えなければいけないことは、確実に増えていますね。そんな状況で、デザイナーはどのようにステップアップしていくのが良いのでしょうか。
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