
今後、企業にとってのデザインはどのように変わっていくのか? それに伴って変化していく、デザイナーに求められるスキルとは? 良品計画の代表取締役会長、金井政明氏に、デザインとデザイナーの未来像を聞いた。
良品計画 代表取締役会長
――現在のデザインをどう感じている?
金井政明氏(以下、金井) よく分からなくなってきましたよね。先日も、グッドデザイン賞を運営する日本デザイン振興会で話していて、「どこまでがデザインなんだろう」という議論がありました。「その答えを出すより、今は議論をしていくことが大事」とまとまりましたが、なかなか難しいですよね。
特にインダストリアルデザインやグラフィックデザインで言えば、例えば、1951年に松下幸之助さんが米国から戻ったとき、「これからはデザインの時代やで」と言ったという逸話があります。あれはきっと、基本的な製品が出来上がった後、どんな形や外装を付けるかっていう意味のデザインだったんじゃないかなと思います。日本では長らく、商品をもっと売りたいという企業の課題解決にデザインが使われてきたと言えるでしょう。
最近多いウェブデザイナーや、UI(ユーザーインターフェース)デザイナー、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーも、仕事としてはこれまでのデザイナーと大差がない。時代が変わってフィールドがデジタルに置き換わったというだけで、似た領域なのかなっていう気がしますけどね。
社会課題の解決が今後のデザイン
そういった、経済を加速させたり、製品をよりよく見せたりというデザインに対して、今起きているのがソーシャルデザインと言ったらいいのか、2022年度のグッドデザイン大賞になった「まほうのだがしやチロル堂」なんていうのはそうですよね。「どこがデザインなの?」という話も出てくるわけですが、社会課題を解決する仕組みのデザインと言える。「チロル札」というお金みたいなものをつくって、格差をこの場においては無くしてしまう。チロル札で、駄菓子だけではなく弁当や飲み物も買えます。
▼参考記事 グッドデザイン大賞は、奈良の「まほうのだがしやチロル堂」それ以外にも言語をいくつか定義していて、チロル札の原資となる大人からの寄付を「チロる」と表現しています。店内には酒瓶のケースが什器に使われていたりして、緊張感を和らげる内装で、子供たちが気を使わずに入れる雰囲気をつくり出しています。こうした策略があるので、デザインと言えると思います。
――今後必要なデザイナーのスキルは?
金井 プロダクトにしてもグラフィック、建築でも、社会課題に対してどのようにデザインの力を使うことができるか。そのためには、色や形といった分かりやすい範疇のデザインだけでは、もう勝負にならない時代です。
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