デザインの価値、デザイナーのスキル 第1回

デザインに対する価値観が変わり、企業はデザイナーに求めるスキルを見直し始めた。デザイナー以外の社員にもデザインのスキルを身につけさせようとしている。中堅・ベテランのデザイナーも、既存のスキルをベースに新たなスキルにも対応すべきだろう。

●デザイン/デザイナーを取り巻く環境が大きく変わってきた
●デザイン/デザイナーを取り巻く環境が大きく変わってきた

 デジタル化の進展やデザイン経営への期待など、企業とデザインの関わり方が大きく変化する中、デザイナーに求められるスキルが広がっている。デザインの力が企業経営で注目されるようになると、プロダクトデザインやグラフィックデザイン、ブランディング、Webデザインといった枠を超え、ITソリューションの開発やスタートアップへの参加、地方創生の支援などにもデザインの力を必要とするようになった。

 プロダクトデザイナーやグラフィックデザイナー、UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナーだけでなく、最近はビジネスデザイナーやサービスデザイナー、コミュニケーションデザイナーといった存在も珍しくない。「狭義のデザインから広義のデザイン」へとデザインの領域が広がるに従い、美術大学を卒業していない「デザイナー」も増えている。

 今回の特集は、企業とデザインの関わり方が大きく変化する中、企業はデザイナーに何を期待しているのか、デザイナーはどうすべきか、どんなスキルがデザイナーに求められているかなどを、企業事例や識者のインタビュー、現場のデザイナーなどに取材してまとめた。さらにデザイナー教育会社のコンセント(東京・渋谷)に、今後のデザイナーの方向性について寄稿してもらった。

デザイナーは社内にデザインを浸透させる先兵に

 例えば富士通は、デザイン部門の再定義を進めている。社会課題にデザインアプローチで取り組むことの重要性をデザイナーが伝えるなど、デザインへの関心を集めるコミュニケーションを実践しながら、同部門の存在感を強く示そうとしている。

 NTTコミュニケーションズは2020年4月にデザイン部門を発足させ、ビジネスデザイナーやUXデザイナー、UIデザイナー、デザインリサーチャーの4つの職種でデザイナーを増やした。さらに同社のデザイナーの場合、一般社員にもビジネスデザインやUXデザイン、UIデザイン、デザインリサーチの4つのスキルを浸透させる役目も持つ。社員に学んでもらい、自らのスキルアップも図る。

 クラウド型の会計サービスを提供するマネーフォワードは、デザイナーの評価基準にスキル以外に企業組織への貢献力を盛り込み、さらには行動指針への体現度も加味。ユーザーに感動を届けるためにも、デザインの考え方が経営に欠かせないという判断があった。

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