連載の最終回となる本記事では、ECサイトのCVR(コンバージョン率)を高めるうえでもう一つの重要な課題といえる「フォーム離脱」を取り上げる。せっかく商品に興味を持つ、カートに追加までしてくれた訪問者が、離脱するようなフォームの設計になっていてはもったいない。そこで求められるのが、自社のフォームを分析し、改善するEFO(エントリーフォーム最適化)の手法だ。9つのチェックリストで、売れないサイトになっていないか確認しよう。

せっかく購入フォームまで進んだ訪問者が、入力のわずらわしさを理由に取りこぼしてしまってはもったいない。売れるフォームをつくるための改善方法を解説する(写真/Shutterstock)
せっかく購入フォームまで進んだ訪問者を、入力の煩わしさが理由で取りこぼしてしまってはもったいない。売れるフォームをつくるための改善方法を解説する(写真/Shutterstock)

 サイト訪問者全体のなかで、購入フォームまでたどり着くのは極わずかだ。それにもかかわらず、その訪問者たちの多くは名前や住所といった情報の入力段階で離脱してしまう。そんなフォーム離脱の割合は、当社調べでなんと約70%に上る。わざわざ購入フォームまでたどり着いた、購買意欲の高い訪問者をここで離脱させてしまっては惜しい。まずは以下の式に当てはめて、自社のフォーム離脱率を計算してみてほしい。

(1)購入フォームからの離脱数 ÷ 購入フォームのページビュー数
(2)(購入フォームのページビュー数 ー 購入完了数)÷ 購入フォームのページビュー数

 一般的には、購入フォームの離脱率は70%以下になることが望ましい。もし70%を超えていたら改善は必須だ。CVRにも大きく影響するため、早めに取り掛かりたい。

 フォーム離脱の改善を進めるうえで、最初に考えてほしいことは、そもそもなぜフォーム離脱が起こるのかだ。おおよそ以下の4つの理由に分けられる。

(1)入力フォームが見づらく、入力しづらい
(2)入力項目が多すぎて、面倒に感じられる
(3)正しく入力したはずなのに、確認画面で何度も入力エラーが起こる
(4)なんとなく入力を後回しにしてしまう

 消費者の立場に立って考えてみると、(1)~(3)については、心当たりがある人も多いのではないだろうか。これらの課題は本記事で解説するEFOツールの導入によって簡単に改善することができる。具体的なEFOのアプローチやツール導入の際の選定基準などは本稿で解説する。

 「(4)なんとなく入力を後回しにしてしまう」については、訪問者がフォーム入力をしている状況を思い浮かべてほしい。意外と多いのは、通勤途中や寝る直前のベッドのなかでフォームに打ち込んでいるパターンだ。こうした訪問者が後回しにしてしまうのが、決済情報の入力。クレジットカードが手元になく、その場で入力できないことなどが離脱の原因になりがちだ。

 この問題に対する施策はシンプルで、「Amazon Pay」や「PayPal」のような、あらかじめクレジットカード情報を登録しておくことで、カードが手元になくても支払えるサービスを導入することだ。クレジットカード情報を入力せずに購入できる仕組みをつくることで、離脱率が下がり、CVRの向上が見込める。こうした支払い方法の多様化・簡略化は「(2)入力項目が多すぎて、面倒に感じられる」ような層の離脱防止にもつながる。

ページ遷移は極力減らす、3つの指標で分析

 ここからは当社の支援先である化粧品、衣料、雑貨などを取り扱うECサイトを事例に説明していこう。まず、施策の実施前は、同サイトのフォーム離脱率は82%だった。合格ラインは70%以下と考えると、かなり悪い数字である。実際、細かな分析をするまでもなく、明らかに問題を抱えている点があった。

 それは商品をカートに追加してから、購入完了に至るまでのページ遷移が非常に多いという点だ。一般的に購入直前のページ遷移は、1ページ増えるごとに5~20%程度の離脱があるといわれる。これを理解しておらず、結果的に他意なく多数のページを遷移させているサイトは多い。

 実際の導線は下図のようなものだった。なんと商品ページから購入完了までに7ページも遷移させる仕組みになっていた。これではサイト訪問者がうんざりして、途中で離脱してしまうのも当然だろう。

改善前の購入フォームは項目数が多く、離脱率が高かった
改善前の購入フォームは項目数が多く、離脱率が高かった

 このECサイトの場合、特に煩わしかったのは、会員登録時と注文時の2回にわたって個人情報を入力しなければならない点だ。このような設計のECサイトはいまだに多いが、訪問者にとっては非常に面倒だ。

工夫によって入力項目数を大幅削減

 そこで個人情報の入力を注文時のみで済むようにした。この情報を基に会員登録は自動で行うという導線である。会員登録していない訪問者(ゲストユーザー)であっても購入できる仕組みがある「楽天市場」のようなECサイトもこれに近い。なお、これを実装するうえでは、任意のSNSアカウントで会員登録可能な「ソーシャルログイン」の活用も検討してほしい。注文情報を基に、自動で会員登録する機能がないフォームもあるためだ。

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