ECサイトに限らず、Webサイトの成果を高めるために欠かせないのが「CRO(コンバージョン・レート・オプティマイゼーション=CVR最適化)」だ。自社サイトを売れるサイトに改善するための統合的な活用を指す。多くの企業はいかにサイトの訪問者を増やすかという集客に躍起になりがちだが、サイトが売れる構造になっていなければ、穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものだ。第1回では売れないサイトの共通課題と、7つの改善ポイントを解説する。

(写真/Shutterstock)
サイトが売れる構造になっていない状態で集客しても、穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものである(写真/Shutterstock)

 新型コロナウイルス禍以降、ECサイトの利用、インターネットでの動画視聴などの「巣ごもり消費市場」が爆発的に成長した。EC市場においては、企画・生産した商品を消費者に対して直接販売するD2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)が注目を集め、スタートアップから大企業まで参入の動きが加速している。

 ただ、ECサイトを開設して、商品を掲載したからといってすぐに売り上げが上がるケースは少ない。ECサイトを知ってもらい、訪問者を増やすこと、商品の魅力が十分に伝わるページを制作すること、購入しやすいサイトデザインになっていることなど、取り組むべき施策は枚挙にいとまがない。

 いくら集客を頑張っても、訪問者が買いやすいサイト構造になっていなければ、買わずにサイトを離脱してしまう。それは穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものだ。広告をクリックした商品サイトの訪問者の、実に90%超が離脱(直帰率)している。あるいは、カートに商品を入れた訪問者のうち、なんと約7割が商品を購入せずに離脱しているという調査結果がある。

 だからこそ、集客だけでなく、売れるサイトにするための「コンバージョンレート(CVR)最適化」が極めて重要になる。「CRO」とも呼ばれる。本連載では、訪問者の離脱を減らし、売り上げを上げるためのCROの考え方、分析施策、マーケティングツールの活用法などを購買プロセスごとに整理し、具体事例と共に解説する。

ECサイト運営者から多く寄せられる相談とは

 「インターネットを見ていて、良いと思う商品を見つけてECサイトを訪れたが、想像していた商品と違った」「どこから購入できるのかが分かりにくい」「商品をカートに入れて、フォームから個人情報を入力し、購入完了ボタンを押したが、大文字/小文字などの入力間違いでエラーになってしまった」――。

 こんな経験から、商品の購入を止めた経験はないだろうか。「売れないサイト=CROができていないサイト」の典型例だ。筆者はインターネット広告代理店を創業し、現在はECサイトの改善、決済、解約まで、ECサイトの購買プロセスにおけるほぼ全てのマーケティングファネルの支援を行っている。そんな当社へ、実際にECサイト運営企業から数多く寄せられる相談内容を以下に記載したい。

  • 「新規獲得が伸び悩んでいて、広告で新しい顧客獲得チャネルをつくりたい」
  • 「CPA(顧客獲得単価)が高騰しているため、最適化したい」
  • 「CVRを上げたい」
  • 「LTV(顧客生涯価値)がなかなか上がらない」

 中でも最も多いのが、「CVRを上げたい」という相談だ。競争激化による広告のCPC(クリック単価)の高騰やCVRの低下、フォーム離脱(かご落ち)など、要因は企業によってさまざまだが、サイトのCVRに課題を持っている企業は非常に多い。こうした課題の解決には、ECサイトの訪問者が購入するまでの一連の購買体験をストーリーとして捉え、改善していく考え方が必要だ。だが、実際に相談を受けていると、プロセス全体ではなく、個別課題だと捉えてしまっている企業が多いと感じる。

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