2000年の女優デビュー以来、数多くの作品で主演を務めるなど、シーンのトップを走り続けてきた上戸彩。現在2人の子を持つ上戸は、家庭と仕事を両立させるため、どのようなバランスをもって仕事に取り組んでいるのか。話を聞いた。
※日経トレンディ2023年3月号より。写真の全カットを含め、詳しくは本誌参照
2023年2月、上戸彩が出演する映画『シャイロックの子供たち』が公開される。上戸は、00年の女優デビュー以来、数多くの作品で主演を務めるなど、シーンのトップを走り続けてきた。「タレントCM起用社数ランキング」では通算6度も年間首位を獲得し、現在も活躍が続く。だが、近年の俳優業を振り返ると、松本潤と共演した22年の「となりのチカラ」が久しぶりの連続ドラマ、今回の『シャイロックの子供たち』も6年ぶりの映画出演となる。
――近年の上戸さんは、出演作をどのように決めているのでしょうか?
お仕事のオファーを頂いたときは、いつも「どうしよう、どうしよう」と悩んでいます。
例えば、すごく魅力的な作品でも、自分の中で母親としてのスイッチと仕事のスイッチのバランスがあって、「今の自分に難しそうだな」と感じる作品は諦めたりしますね。すごくテーマが重い作品の場合、その気持ちを家に持って帰ってしまいそうで怖いですし、また、たくさん出番がある場合は、家に居られる時間が減る……。そのようなお仕事などはよく揺れ動いてしまいます。
――それでも仕事は挑戦したい存在であるということですね?
家族ができて、子供ができて、育児の大変さを知ったからこそ、仕事ができるうれしさや楽しさを改めて知りましたね。そして、前ももちろんなかったわけではないんですけど、お仕事に対して感謝の気持ちもより強くなりました。まず、大事な仕事である育児を家族に支えてもらいながら、演技に挑戦できる環境。そして、家庭とのバランスを取るため、私は長時間を撮影に割けず、それを分かったうえでお仕事のオファーを頂けるということ。そんないろんなことに対して、すごく感謝するようになりました。
実際にお仕事を受けると、少なからず、当初の予定とは違う状況になってしまうこともあるんですけど、それは家族も理解してくれているので、協力してもらっています。コロナ禍では家族みんなでかからないように気をつけて生活したり……。家族には本当に感謝しています。
1人で過ごす時間が貴重に
――リフレッシュの時間は?
マッサージですね(笑)。なるべく携帯電話に触らないようにして、マッサージされていることに集中するようにしています。でも撮影が後半にも差し掛かると、頭の中をぐるぐると回り、携帯電話をいじって色々とやってしまうんですけど。
1人で過ごす時間が貴重だとも感じます。1人の時間を有意義に過ごしたいと考えるようになったというか。昔は独りぼっちの時間ってすごく嫌で、1人でご飯食べても全然おいしくなかったんですけど、今は1人でロケ弁を食べているとおいしいなあと思ったり。『シャイロックの子供たち』では地方ロケがあったんですけど、移動時間にコーヒーを飲みながらゆっくり映画などを見ていると、なんて幸せな時間だろうと思いました(笑)。それと、リフレッシュの時間とは違いますけど、最近ロボット掃除機を買いました。初めて使ったら、「もっと早く使っておけばよかった」って思っています。
年齢を重ねて、仕事に変化
映画『シャイロックの子供たち』で上戸が演じたのは、銀行の小さな支店で起こった現金紛失事件の犯人と疑われてしまう銀行員の北川愛理。阿部サダヲ演じる主人公の西木雅博、玉森裕太演じる田端洋司と共に、事件の裏側を探っていく役どころだ。
――上戸さんは現在37歳。演じる役柄が変わってきているのではないかと思います。『シャイロックの子供たち』で演じた、働く女性の役は久しぶりですね。今、どのような役割を求められると感じますか?
奥さん役やお母さん役は等身大で演じられるので、自分の中のスイッチ的にはとてもお話を受けやすいですね。今回の愛理のように、特に独身の役は本当に少なくなってきています。今回の作品は、阿部サダヲさんとご一緒したいというのが大きな出演の決め手の1つだったんですけど、恋愛が絡んでいないという点も自分の中で取り組みやすかったポイントの1つです。
出演作を自分で決めるように それに伴う責任感も増した
――上戸さんは、これまでに数多くの主演経験があります。主役ならではの達成感があるのではないかと思うのですが、家庭との両立という制限があると、なかなか主演に挑戦できないのでは?
若い頃は事務所と相談をしながら決めた仕事が多かったので、もしその頃から私に判断を任されていたら、お断りしてしまっていた作品もあったと思います。そう思うのは、なんせ私は自分に自信がないんです。「私には無理」「これはできない。あれもできない」と泣いたこともありました。それでも撮影が終わった頃には、やっぱり何か結果になっていたり、自分の身に付いたり、プラスで終わることの方が絶対に大きい。それは分かっているんですけど、今でも自信がないので、判断することに悩んでしまうんです(笑)。
――出演する作品をご自身で判断するようになると、その分、責任感もより増すのではないでしょうか?
そう思います。だから余計に“結果”も気になります。例えば、連ドラの場合、時代も変わっているので、かつて私が主演をやらせていただいた頃とは視聴率が変わっていますよね。昔の数字の半分でも、今では数字が高いっていわれるけれど、そこには、せつなさみたいなものを感じちゃったりします。そういう数字を気にするよりも、しっかり見てもらえる作品に出演したいなと思う気持ちが今は強いですね。
今回のように、映画ももっと挑戦していきたいです。ドラマの楽しさももちろんたくさんあるんですが、映画は作品の細かいところまで作り上げていくというか。作品によって違いますけど、映画は一作にかける時間や日数がドラマに比べるとはるかに長く、しっかりと作品と向き合うことができるので、演じていて楽しいですね。
(写真/大木慎太郎=fort)
(スタイリスト/宮崎真純=likkle more、ヘアメイク/中谷圭子=AVGVST、衣装協力/STUDIOUS)