作品ごとに新たな振れ幅を見せている高橋文哉が、日経トレンディが22年に選出した「来年の顔」だ。デビュー作である『仮面ライダーゼロワン』で役者への思いを強くし、2021年から7クール連続でドラマに出演する。「自分では気付かなかった一面が出せるのも、役者の面白さ」と語る21歳の新星が、スターへの階段を駆け上がる。

※日経トレンディ2023年1月号より。詳しくは本誌参照

日経トレンディが2022年の「来年の顔」に選んだ高橋文哉
日経トレンディが2022年の「来年の顔」に選んだ高橋文哉
高橋文哉
2001年3月12日生まれ、埼玉県出身。2019年『仮面ライダーゼロワン』で主人公に抜擢。ドラマ『先生を消す方程式。』『夢中さ、きみに。』『着飾る恋には理由があって』、映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ファイナル』等に出演した後、ドラマ『最愛』で話題に。現在は火曜ドラマ『君の花になる』に出演中

 ドラマ『最愛』で吉高由里子演じる主人公の弟であり、数奇な運命を歩む青年役で大きな注目を浴び、数々の賞を受賞した高橋文哉。2021年に続き、22年も全クールのドラマに出演。放送中の火曜ドラマ『君の花になる』でメインキャストを演じている。作品ごとに新たな振り幅を見せている21歳の新星が、日経トレンディが22年に選出した「来年の顔」だ。

 21年に「来年の顔」が報じられたニュースを見ていたこともあって、僕が選ばれたと聞いた時は驚きましたし、とてもうれしかったですね。22年は、途切れることなくドラマに出演させていただいたうえに、『牛首村』で初めて映画のメインキャストも務めました。CM出演もありましたし、新しいことに挑戦できた年だと思います。

 『最愛』は、主人公の弟で運命に翻弄される青年という難しい役を全身全霊で演じ、評価いただいた作品です。どの現場に行っても、「『最愛』見てますよ」と声をかけてくださる方が多くいました。作品の影響力を実感しましたね。

 役への考え方や取り組み方は以前から何も変わっていないですが、自分への向き合い方は少し変わりました。自分がどこに向かって努力をすべきなのかイメージが具体的になりました。がむしゃらじゃなくなったというか。大人になったということなのかもしれません。

 デビュー作は19年から20年にかけて放送された『仮面ライダーゼロワン』。オーディションに受かった段階で、役者への思いを強くした。

 当初は、芸能界に漠然とした興味しかなくて、「ドラマに出ている役者さんの仕事って魅力的だな」というふうに思っているぐらいだったんです。でも、『仮面ライダーゼロワン』のオーディションに合格して台本を読んで、監督やスタッフの方とコミュニケーションを取っていくうちに、「死ぬまでお芝居で生きていきたい」と決意しました。

 撮影の中盤ごろに、役が自分の中にふっと落ちてくる実感があって。現場で監督と僕のイメージをすり合わせながらカメラの前に立つことは、難しさと同時に楽しさを感じました。

 「この役だったらはしゃいでる時にこういうセリフを言いそうだな」とか、「こんなしぐさをしそうだな」ということを自分の中で咀嚼して、感情を一つ一つ丁寧に作っていく役作りをその時に覚えて、今でも実践しています。

 様々な役を務める中で最も難しさを感じたのは、『仮面ライダーゼロワン』でヒーロー役の後、ドラマ『先生を消す方程式。』に出た時だ。学園一の優等生だが裏では暴力的に仲間を支配するという二面性を持つ高校生役を演じた。

 デビューから約1年半の間、ヒーローを演じ「俺が正義だ」「お前が悪だ」というセリフをずっと言い続けていたのが、ほんの数週間後にガラッと変わって、同級生に対し暴力的なセリフを吐くサイコパスチックなヒール役を演じることになりました。少し前まで「変身!」と言って世界を守っていた人が、今度はクラスメートを殴っている。そのギャップに最初は戸惑いましたね。

 ただ、そこで振り幅を実感したことで、例えば台本に「笑っている」と書いてあったとしても、ヒーローのような爽やかな笑顔もあれば、サイコパスがあえて笑みを浮かべていることもある。役が100個あったら笑い方も100通りあるはずなんだということに気付きました。

 役を演じるというのは、「どれだけ自分を消せるか」。それに尽きると思っています。自分と同じ顔をした違う人間がどこかの別世界に存在するということを自分自身が信じてあげる。他人から見て“高橋文哉の色”みたいなものがあまりないほうがよくて、その時にやっている役のイメージが先行するような役者でありたいです。

 自分以外のものになれることが圧倒的に楽しいです。医者にもなれれば殺人鬼にもなれるし、弁護士や警察官にもなれる。その幅を作るのも自分ですし、評価していただくためにがんばるのも自分。自分次第で進むべき道が変わる仕事は世の中にたくさんあると思いますが、その中でも役者という仕事は飛び抜けていると思います。だからこそ惹かれます。

 年上の方とお芝居をする機会が多いですが、先輩方に比べたら僕は圧倒的にキャリアが浅い。どなたからも学ばせてもらうことが本当に多いです。毎回、学んだことや感じたことを台本にメモし、見返すことも多くあります。その内容を実際に身に付けることができたら、より成長した自分を見てもらえると思いますね。

現状に満足せず上を目指す

 「自分に対しての負けず嫌い」だと自身の性格を分析する。その性格が役者をやるうえでプラスに働いているそうだ。

 ずっと自分のお芝居に対して納得いかず悩んでいたんですが、ある役者仲間に「たぶん役者はみんな死ぬまで納得がいかないんだと思う。納得してしまったらそれ以上にはなれなくなってしまう」と言われて、「その通りだな」と思ったんです。ゴールもないし、順位付けされる世界でもないので、現状に満足せずに上を目指し続けるのがいいのだなと受け取りました。

 自分のお芝居を見て、「これが正解だ」「これしかない」と決めつけたくないんです。たまに「今の演技は良い顔をしていたな」と思うこともありますが、「もっと伝えたいことがあったのに、それが表情に出ていなかったな」と振り返ることもあります。そういうことの繰り返しが大事なんだなと。

 演技を突き詰めた先の達成感もあります。「もっとこうしてほしい」とか「こういう顔を見たい」というふうに、求められている瞬間が一番楽しいかもしれません。自分が100だと思ってやっていたことが、他の人からしたら10でしかなくて、「もっと出してほしい」と言われることで自分の想像を超えられる。そこで出したお芝居が監督やプロデューサーの方にハマるとうれしいですね。

 これからの課題はあり過ぎて何を挙げたらいいか分からないぐらい。「全部クリアできることはないんだろうな」と思いながらも、「課題は?」と聞かれた時に思い浮かぶものを少しでも減らしていけたらいいなって思います。

 撮影中は、役のことを考えない日がないほど没頭している。

 家で「今日の台本読みは終わり!」と思ってゲームをしていても、ふと「あの役がもしゲームをやったらどういう顔をするだろう?」って考えちゃうんですよね。そうやって役に没頭するのは全く苦じゃないです。

 今演じているドラマ『君の花になる』でのボーイズグループ・8LOOMのリーダー&センター役も今までやったことがない役柄。不器用で一匹狼でツンデレで……。ダンスや歌唱シーンもあるので、たくさん考えることはあって。意図的に自分の中にはない声色や表情を使い分け、役の感情に自分を近づけていく作業を特に意識しています。個性の強い役なので、どれだけ自分をゼロにして役を憑依させられるかだなと。

 もちろん、程よい休みも大事だなと思っていて、息抜きしたい時は友達とどこかに遊びに行っています。

 役者の仕事と並行して、月1で「オールナイトニッポンX」のレギュラーパーソナリティーを務めているが、とても良いリフレッシュの場になっているという。

 ラジオでの僕がそれこそ何の色も付いていない高橋文哉です(笑)。「高橋文哉ってどういう人なんだろう?」と思っていただいた時に、「オールナイトニッポンX」を動画付きで見ていただくと、どういう人間かが分かると思います。1時間、自分の思う通りにやらせていただいて、リフレッシュしている感覚もありますし、めちゃくちゃ楽しい。一人で5時間ぐらい収録できるんじゃないかなって思います(笑)

 初回の放送中に、役柄での僕しか知らない方が、ラジオを聴いてくださって「こんな人だと思いませんでした」「印象と違いました」というメールがたくさん届いたりして、本当にうれしかったです。僕が背伸びをせずにやっているコンテンツに対してそういう反応をいただけるなんて最高だなと。そういう場が毎月あることにすごく感謝しています。

 23年の目標ですか? 変わらずこうやって毎日お芝居のことを考えていたいです。そのうえで、たくさんの方に「高橋文哉ってこういう役もできるんだ」っていうふうに思っていただける作品を、1つでも2つでもお届けできたらいいなと思います。「来年の顔」にふさわしくなれるよう、引き続きまっすぐに仕事に向き合っていきたいです。

 10年後は、「高橋文哉の代表作って何だろう?」と100人に尋ねた時に100通りの作品が出てくるような、様々な役で強い印象を与えられる役者になっていたいと思っています。

(写真/大木慎太郎(fort))

(スタイリスト/鴇田晋哉 ヘアメイク/大木利保)

注)このインタビューは、「日経トレンディ」2023年1月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版でご覧いただけます。
▼関連リンク 「日経トレンディ」(電子版)
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