
あらゆる分野で値上げラッシュが続く中、価格戦略のコンサルティングサービスが注目を集めている。この分野で急成長を遂げるのが、プライシングスタジオ(東京・港)だ。これまで数値化が難しかった商品やサービスの価値を可視化し、顧客に受け入れられる価格決定を支援する。コストや競合の価格水準だけでなく、自社が提供する商品やサービスの価値を価格に反映する「バリューベースプライシング」の存在感がじわり高まっている。
ペットフードを手掛けるPETOKOTO(ペトコト、東京・新宿)は2022年7月、物流費や原材料費の高騰を受けて価格改定を実施。12パックから96パックまで5段階の個数でペットフードを届けるサブスクリプションサービスを1~2割値上げした。
この価格改定を支援したのが、19年に創業したプライシングスタジオだ。価格分析のプロセスを自動化する「Pricing Sprint(プライシングスプリント)」を提供し、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やサブスクリプションを手掛ける企業を中心に約50社、100サービスのコンサルティング実績がある。
プライシングスタジオの高橋嘉尋社長によると、価格決定には3つの方法がある。1つが「コストベースプライシング」。原価などのコストを出発点として、そこに利益を上乗せして価格を決める。2つ目が「競合ベースプライシング」で、競合の価格を基準に自社の価格を決める。そして3つ目が、プライシングスタジオが強みを持つ「バリューベースプライシング」だ。顧客が自社の製品やサービスに対して感じている価値をもとに価格を決定する。
古典的なマーケティングの要素として4Pという概念がある。Product(製品)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(販売促進)の4つだ。価格は唯一利益を生み出す要素でありながら、「勘や経験に頼る部分が大きかった」(高橋社長)という。
そして従来の価格戦略は、コストベースプライシングか競合ベースプライシングが一般的だった。コストや競合の価格は数字として示せるためだ。一方、顧客が感じている価値を目に見える形で表すのは難しい。プライシングスタジオは様々な分析手法を用いてこの価値を可視化する。
設立:2019年6月
製品/サービス:価格分析のプロセスを自動化する「Pricing Sprint」
市場:自社製品やサービスの価値を適切に示して価格に反映したい企業を支援

「最適価格」を見極める方法とは?
同社はPSM(価格感応度)分析と呼ばれる手法を活用している。1976年に開発したオランダの経済学者の名前から、「Van Westendorpモデル」といわれることもある。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。