
メルカリを代表とする「フリマサイト」の普及により、オンライン上における二次流通市場が急激に広がった。近年はブランドやメーカーが外部のサービスに依存するのではなく、“自前で”リユース事業へ参入する動きも広がり始めている。そのような企業の取り組みを、黒子としてサポートしているのがFree Standard(フリースタンダード、東京・世田谷)だ。新進気鋭のコマース系スタートアップが目指す、これからの消費のスタンダードとは。
1990年代後半から日本でも本格的にECの市場が立ち上がり、ブランドやメーカーが自社のECサイトを開設することも当たり前になった。そんな今でも、多くのECサイトにおける消費者の選択肢は「商品を購入するか、購入しないか」の2つが基本だ。
ここへ「実際に商品を試してみてから購入を検討する」「(公式サイトで)新品ではなくリユース品を購入する」といった選択肢が加わるとどうか。
ECが普及したとはいえ、高額な製品や大型の家具・家電などをいきなりECサイトで購入することには、まだ抵抗がある人もいるだろう。もし一度お試しできる仕組みが設けられていれば、納得したうえで購入するかどうかを検討できるようになるはずだ。また、公式のリユースサイトがあれば「新品価格では手が届かなかった」人たちが、そのブランドの商品を手に取ることができるようになるかもしれない。
レンタル利用者の約85%が新規ユーザー、自社EC拡大の起爆剤に
実際、オンライン上のコマース体験はどんどんそのような方向にシフトしている。家具のサブスクや家電のレンタルなど、リアルな商品と「サブスクリプション(定額課金)」や「レンタル」というビジネスモデルが結びつくことにより、手ごろな価格帯から商品を試せる環境が広がり始めている。また、メルカリをはじめとしたフリマサイトの普及は、アパレル製品から家具や家電、日用雑貨まで幅広いものがリユース品としてオンライン上で二次流通する土台をつくった。
このような「レンタル(お試し購入)」「リユース」の仕組みを、ブランドやメーカーが自社ECサイトへ簡単に実装できる仕組みを開発しているのが、2020年創業のFree Standardだ。
同社のサービス「Retailor(リテーラー)」の機能は大きく2つ。1つはECサイトに1行のタグを埋め込むだけで既存の自社サイト上に「お試しボタン」を表示し、購入だけではなくレンタルという選択肢を追加できる機能。もう1つが、自社のリユース専用サイトを構築できる機能だ。
非常にシンプルに見えるが、2つの機能に共通する特徴は、商品の管理、メンテナンス、配送、カスタマーサポートといった「裏側のオペレーション」をすべてFree Standardがサポートしているところにある。
設立:2020年8月
製品/サービス:自社ECサイトへ「レンタル」「リユース」機能を簡単に実装できる「Retailor(リテーラー)」を提供
市場:ECの新しい購入体験を生み出し、ブランドやメーカーの自社EC強化にもつながる

リユース市場において日本の先をいく米国では、パタゴニアやバレンシアガをはじめとした有名ブランドが自社でリユース事業を立ち上げている。こうした大規模なブランドでも、ノウハウやリソースが足りないことを理由に外部のスタートアップの力を借りながら事業を立ち上げるケースも少なくない。まさにそこに目を付け、米国ではTrove(トローブ)というスタートアップが累計1億2000万ドル以上の資金調達を実施しながら急拡大している。そのTroveの“日本版”といえるのが、Free Standardだ。
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