未来の市場をつくる100社【2023年版】 第9回

不要になった寝具を回収し、新たな素材として再生する。そんなサービス「susteb(サステブ)」を提供するのが、yuni(ユニ、東京・渋谷)だ。寝具は国内で年間約1億枚が焼却処分されているといわれ、そのリサイクル率は僅か2%にすぎない。寝具業界ではコストがかかり「解決できない」と考えられてきたが、回収と販売のタイミングで利益を得るという発想の転換でビッグビジネスに結びつけようとしている。

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寝具を回収して再素材化し、マットレスなどの新しい商品にリサイクルするサービスをyuniは手掛ける

 「アパレルのリサイクル率が37%なのに対して、寝具のリサイクル率はたった2%。ほぼすべてが焼却処分されている。それが寝具業界の常識だった」と話すのが、yuni CEO(最高経営責任者)の内橋堅志氏だ。そんな常識に風穴を開け、掛け布団や敷布団といった寝具を回収し、素材をリサイクルするサービス「susteb」を展開している。

 寝具は粗大ごみに分類される自治体がほとんど。寝具の持ち主が焼却費用を負担し、自治体に回収を申し込むケースが一般的だ。yuniの試算によると、国内で焼却処分される寝具は年間1億枚にのぼると考えられている。国土が狭い日本は、一度ごみを焼却して最小限の大きさにして埋め立ててきた。そうした経緯から、寝具のリサイクル意識は高まらなかった。

 この問題を解決しようとするサービスがsustebだ。家庭や自治体、企業と連携して寝具を回収し、主に綿や羽毛、ウレタンといった素材を再利用する。2022年12月現在、兵庫県加古川市や大阪府枚方市といった全国10の自治体とも連携し、各地域の廃棄待ち倉庫から回収しているという。個人であれば、同社のホームページから「サステブお片付けプラン」(税込み5500円)を購入し、回収パックに詰めて集荷を依頼することもできる。

 21年9月のサービス開始から約1年で、総引き取り枚数は10万枚を突破。月間では最高1万5000枚を引き取るまでに拡大している。

自治体から回収される寝具
自治体の倉庫から、トラックの荷台に乗せて布団が運ばれてくる
yuniの工場には、焼却処分されるはずの寝具が運ばれ、リサイクルされる
yuniの工場には、焼却処分されるはずの寝具が運ばれ、リサイクルされる

 回収した素材は、再生素材として販売するほか、同社のスリープテックブランド「xSleep(クロススリープ)」などの商品に再利用される。xSleepはオンライン診断に基づき、体形やライフスタイルなどに合わせてパーソナライズしたマットレスを提供するサービス。さらに、引き取り依頼をした人が、再生した素材と同量の商品を安価に購入できる「RBRTH(リバース)」というサービスも提供。自社で製造した商品をふたたび回収し、再素材化することで、循環型のエコシステムを強く意識した設計を目指す。

 「回収→再生→販売→回収という循環をつくることが目的。寝具の廃棄をなくすだけではなく、膨大な資源へと変えていく必要がある」(内橋氏)

スリープテックブランド「xSleep(クロススリープ)」から、クッションや毛布といった商品が発売予定
クッションや毛布といった商品もラインアップ
yuniで引き取った布団が大量に保管される
yuniの倉庫には、出荷待ちの製品が数多く並ぶ

 環境省は22年8月、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の関連ビジネスの国内市場規模について、30年までに現在の50兆円から80兆円以上に拡大させるという見解を示した。新しい再生事業への期待は大きく、yuniは22年9月に開催されたピッチコンテスト「STARTUP CATAPULT(スタートアップ・カタパルト)」、11月に開催された「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会2022」「StartupGo!Go! The Pitch 2022」で、それぞれ優勝を果たした。

再生素材で成功しやすい3条件、寝具はすべて満たす

 寝具の再生事業を思いついたのは、内橋氏の実家が寝具メーカーだったためだ。高校生のときから寝具の製造・販売を手伝う中で、寝具が焼却処分される「お布団の死」という課題に直面したという。自身が機械学習のエンジニアの経験があり、再生した素材を商品化するプロセスをDX(デジタルトランスフォーメーション)化することで、サーキュラーエコノミーに貢献できる。寝具の知識とエンジニアの経験が融合した結果、sustebが誕生した。

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