未来の市場をつくる100社【2023年版】 第5回

AI(人工知能)を使って記憶を定着させる学習サービス「Monoxer(モノグサ)」を提供するモノグサ(東京・千代田)が、導入教室を急速に増やしている。児童生徒の記憶量を可視化し、指導者が効果的にサポートできる仕組みが評価される。ビジネス領域との親和性も高く、東京海上日動火災保険は従業員のスキルアップに活用を検討。リスキリング(学び直し)のトレンドに乗り、さらなる市場拡大を目指す。

モノグサCEOの竹内孝太朗氏(左)と、CTOの畔柳圭佑氏(右)
モノグサCEOの竹内孝太朗氏(左)と、CTOの畔柳圭佑氏(右)

 政府が教育のデジタル化をめざす「GIGAスクール構想」を示し、AIを使ったさまざまな学習サービスが登場している。その中で、記憶を定着させるというコンセプトで市場を拡大するのが、モノグサが提供するアプリケーション「Monoxer(モノグサ)」だ。スマートフォンやタブレットを使用し、利用者が出題される問題に答えると、その正誤情報や回答結果によってAIが記憶の有無を判断。過去の回答傾向から記憶の忘却速度も算出し、利用者が最も効率的に記憶できるようカスタマイズした問題を自動で作成する。

Monoxerのスマホでの利用画面
スマホでの、Monoxerの利用画面。今日の学習予定や、最近の学習状況が表示される

 一般的に、教科書を読んで覚える、問題を解く、映像授業を視聴するといった学習方法では、自分が本当に理解できたかどうかを明確に判断するのが難しい。テストで確認しようにも、問題の数字を変えられただけで手が止まることもあり、返却された答案を復習しても弱点を克服したかどうか確認するすべはない。つまり、理解したかどうかの判断は非常に曖昧だった。

 Monoxerは理解ではなく「記憶」という観点で物事を考える。知識やその使い方をすべて記憶として捉え、覚えているか覚えていないかをシンプルに判断。パーソナライズされた教材を使用することで、覚えている単元は飛ばし、覚えていない単元を集中的に取り組むといった、効率的な学習ができるというわけだ。

 サービスは、主に塾や予備校、学校といった教育機関が契約する。それぞれの児童生徒に使用させ、英単語や漢字、歴史、数式などの覚えたい知識を個別にアプリへインポート。出題された問題に児童生徒が答えることでパーソナライズ化が進むという仕組みだ。サービスを開始した2019年1月は6校だった導入数が、20年1月に70校、 21年1月は2700校と加速度的に伸長。22年12月現在は4000校を超えるまでに成長し、ここ3年で約666倍になった。

単語や画像、文章穴埋め、挿絵など、学習レベルに合わせて回答形式を変化させる
単語や画像、文章穴埋め、挿絵など、学習レベルに合わせて回答形式を変化させる
Monoxerのマーケットプレイスでは、山川出版社や啓林館、旺文社などの学習コンテンツを購入できる
Monoxerのマーケットプレイスでは、山川出版社(東京・千代田)や新興出版社啓林館(大阪市)、旺文社(東京・新宿)などの学習コンテンツを購入できる

 教育機関が注目するのは、指導者が児童生徒の記憶状況を把握できるコーチング機能だ。指導者の端末には、児童生徒の「記憶済み」「記憶中」「弱点」といった記憶状況が色分けで表示される。これまで自主学習に任せるしかなかった記憶度が把握できるため、より児童生徒に合わせた指導がしやすい。また、試験日などの特定の日を指定すれば、期限までの最適な学習スケジュールを自動で作成する機能もある。児童生徒の理解度を可視化して共有することで、モチベーションを維持させつつゴールまで並走できる。

指導者用の管理画面。単元ごとに、児童生徒の記憶状況が一目で分かるよう設計される
指導者用の管理画面。単元ごとに、児童生徒の記憶状況が一目で分かるよう設計される

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