
バーチャル空間で人が過ごす「メタバース」、デジタルに価値を付加する「Web3(ウェブスリー)」、バズワード化し急速に盛り上がったことで、反動も見え隠れする。だが、多くのスタートアップ企業が可能性を信じ、未来をこじ開けにかかっている。業界はどう進むのか――。VRゲームやブロックチェーンゲームを開発するThirdverse(東京・千代田)のCEO(最高経営責任者)である國光宏尚氏と、IT評論家の尾原和啓氏が激論した。
次世代のインターネットといわれる「メタバース」と「Web3」。バズワード化し、大きく盛り上がったこともあり、話題が“収縮”する反動も起きている。
そもそもメタバースとは、インターネット上に仮想的につくられた、いわば現実を超えたもう一つの世界。“外の世界”の期待値が乱高下したとしても、それとは別に実は既に多くの人がバーチャル空間に滞在し、コミュニケーションを取っている現実がある。ビジネス化・産業化の動きも着実に進んでいる。
一方のWeb3。分散型のインターネットともいわれ、暗号資産(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)を利用したアート作品などの暴騰・暴落を目にした人も多いだろう。投機的なイメージが先行してしまっているが、根幹にあるブロックチェーン技術を活用したサービスは続々と開発されており、実際にサービスに組み込まれ始めている。
どちらも独立した技術、そしてアプローチではあるが、インターネットを刷新する可能性を秘めるという点では共通する。可能性を信じて新たに参入するスタートアップ企業、アクセルをさらにふかしている企業も少なくない。そのため、本特集でもWeb3分野を新設し、有望企業をピックアップした。メタバースに関しては、既に多様な業界に浸透し始めており、2023年版の本特集ではあえて「メタバース」という分野は設けていないが、注目領域であることは間違いない。
激論を交わしたのは、『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)の著者であり、ThirdverseのCEOである國光宏尚氏と、IT評論家/フューチャリストの尾原和啓氏。次世代のインターネットの現状と可能性、そして企業が取り組む際のヒントを聞いた。
メタバースとWeb3は、予定通りの幻滅期?
――「メタバース」「Web3」共に、20年から22年にかけて、急速に認知度を増し、話題に上ることも増えました。ただ、盛り上がった反動か、ネガティブな話題が出てきたり、話題になるシーンが減っていたりするようにも思えます。現状をどう見ていますか。
尾原和啓氏(以下、尾原) 予定通りに幻滅期が来たと思っています。メタバースにしてもWeb3にしても、1年などの短い期間で何か大きなことが起きるとは、そもそも誰も言っていませんでした。10年かけて起きる大きな変化であるというのが初めからの見立てです。
國光宏尚氏(以下、國光) まずメタバースについて。メタバースというと大きな話になってしまうので、象徴的なVR(仮想現実)の視点で見ていくと、順調なことが分かります。代表的なVRヘッドセットである米メタの「Meta Quest 2」は、発売から2年ほどで販売台数が1500万を超える規模にまで拡大。23年2月には、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが「PlayStation VR2(PSVR2)」を発売する予定ですし、「TikTok」を展開する中国のバイトダンスが買収したPicoも本格普及を目指して力を入れています。
米アップルも、本命はAR(拡張現実)グラスだとは思いますが、VRもARもどちらも対応できるハードを出してくるとみられます。中国テンセントなどのIT大手もVRに注目しており、今までメタが1社でけん引してきた市場が、23年には大きく広がると思われます。
家庭用ゲーム機で見ると、「Nintendo Switch」(任天堂)の販売台数が1億を超える規模。24年には、VRのハードでその規模が射程に入ってくると考えると、もはやニッチなものとは言えなくなると思います。
メタバースは、まず次世代型ゲームとして広がり、その後に教育現場・職場などに拡大。その後、携帯性に優れたARグラスが広がってきたタイミングで、より多様な領域、消費者に広がっていくと考えられます。そういう視点であれば順調であり、初期の段階から「あれもできる、これもできる」と盛り上がり過ぎてしまった。そういった意味では、幻滅期といえるでしょう。
Web3も同じです。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー