
直面する社会課題を解決し、新市場を生み出す企業はどこか。日経クロストレンドは「未来の市場をつくる100社【2023年版】」を選出した。新型コロナウイルス禍の“出口”がおぼろげながら見え始めた中、伸長が期待できる11の分野で23年の日本を明るく照らす先駆者のリストを公開する。
岸田文雄政権が推し進める経済政策「新しい資本主義」の柱の一つとして、社会の成長エンジンとして期待する過去最大規模のスタートアップ育成策が、2022年11月28日にまとめられた。「スタートアップ5カ年計画」では、現在年間8000億円規模のスタートアップ投資額を27年度に10兆円規模に引き上げると明記。国内のユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)は、将来的に100社の創出を目指すとする。
では、次代を担う有望企業はどんな社会インパクトをもたらすのだろうか。日経クロストレンドは、複数のベンチャーキャピタルをはじめとした各界識者への取材や、『日経トレンディ』(22年11月号)の特集「スタートアップ大賞2022」の登場企業を含めて、約200社をリストアップ。その中から、「新しい市場(新規性)」「売れる(成長期待)」「生活の変化(社会インパクト)」という3つの視点で評価し、23年に飛躍が期待できる100社を選出した。
本特集は19年の初回以来、今回で4回目となる年末の恒例企画だ。例えば、19年に100社のうちの1社として選出したのが、1食分の栄養素が取れる「完全栄養食」のパンやパスタなどを提供するフードテック企業であるベースフード。それから3年、同社は22年11月に東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たした。
もちろん、上場は「ゴール」ではなく、「通過点」にすぎない。ベースフードは完全栄養食という新市場をどのように切り開き、次にどこへ向かうのか。同社の橋本舜社長が新卒で入社し、鍛え上げられたディー・エヌ・エー(DeNA)の会長で日本経済団体連合会の副会長を務める南場智子氏との対談も、本特集の中で掲載していく。
取り上げる100社は、23年に伸長が期待できる11分野の有望企業だ。今回新設したのは「コマース」「Web3(ウェブスリー)」「旅行・インバウンド」「Z世代・α世代」「ペット」の5分野。中でも特に注目したいのが、コマース、Web3、旅行・インバウンドである。
コマース領域は、まさに急成長が期待される分野だ。ECはコロナ禍でぐっと身近になったものの、国内の物販系EC化率は8.78%(21年実績)にすぎず、まだ成長の余地は大きい。国内初のコマース領域特化型VCファンド、New Commerce Ventures(ニュー・コマース・ベンチャーズ、東京・品川)を22年8月に立ち上げた共同代表の松山馨太氏は、こう話す。
「リアル回復の影響でオンラインのみでの販売計画となっているD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)への投資は控えめになっている。一方で、延長保証やライブコマースといったECの購買体験をさらに進化させるソリューションや、小売りの膨大な顧客データや店頭の露出力を活用して広告運用する『リテールメディア』など、成長ジャンルは広がっている」
一方、Web3は、ブロックチェーン技術を中核として「次世代のインターネット」と呼ばれ、注目を集めている。国内では21年の後半ごろから急速に盛り上がりを見せ、多くのスタートアップ企業が参入を表明。ブロックチェーンを活用したゲームやコミュニケーションサービスなども続々と登場している。
暗号資産(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)の暴騰・暴落などが話題となり、投機的なイメージが先行したことから、市場の先行きを悲観する声もあるが、「予定通りの幻滅期」とWeb3事業を展開する起業家・経営者の國光宏尚氏やIT評論家の尾原和啓氏は語る(2人の対談は22年12月7日公開の特集第3回で公開)。関係者は冷静に市場を見つつ、着実に未来に向けて動いている。実際、22年末から23年にかけては、Web3関連サービスが続々と登場する見込みだ。
最後に、旅行・インバウンドは「脱コロナ」を最も期待させる分野だ。22年9月に海外からの入国者の上限撤廃や個人の観光受け入れが解禁され、1ドル=140円台の円安水準にある中で、すでに多くの外国人観光客(インバウンド)が日本を訪れている。日本人の国内旅行も心理的なハードルが下がり、回復基調だ。テーマパークや動物園、美術館などレジャー施設の入場料をサブスクリプションで提供するユニークなスタートアップなど、注目企業7社を紹介する。
それでは、23年の日本を明るく照らす有望企業はどこか。日本発の変革を生み出そうと、力強く芽吹き始めた100社のリストを一挙公開する。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。