2022年12月2日発売の「日経トレンディ2023年1月号」 ▼Amazonで購入する では、「2023-2030大予測」を特集。穀物の害虫による被害を減らすため、デジタル技術を活用した害虫防除が持ち上がっている。代表格は、害虫の飛行パターンを予測し、高出力レーザーによって害虫を“撃墜”する技術。殺虫による生態系への影響について懸念する声もあり、害虫を殺さず、作物から遠ざける技術なども注目されている。
※日経トレンディ2023年1月号より。詳しくは本誌参照
2050年には世界の食料需要量が2010年比1.7倍になると予測されるうえ、穀物生産量の大幅な低下も近年の課題だ。しかも現在、食料総生産の15.6%が害虫による被害を受けているといい、個人の食を揺るがす脅威となっている。これまでの害虫防除には化学農薬が主に用いられてきたが、農薬が効かなくなる薬剤抵抗性の問題や、自然生態系などへの悪影響も懸念されている。新たな対策が急務となり、持ち上がってきたのが、デジタル技術を活用した害虫防除だ。
代表格は、カメラで撮影した画像から害虫の飛行パターンを予測し、高出力レーザーによって害虫を“撃墜”するという技術。農研機構が20年から研究を進めているが、当初は予測技術が確立しておらず、「画像撮影から害虫の位置計測までに0.03秒のタイムラグがあり、その間に逃げられてしまうことが課題だった」(研究担当者の杉浦綾氏)という。
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この問題解決に当たり、物体の立体視ができるステレオカメラを導入。害虫の飛行パターンをモデル化し、現在位置のデータと組み合わせることで、0.03秒後に害虫が飛行する位置の予測を可能にした。現在はレーザーの照射方向の制御や、害虫駆除に効果的なレーザーの検討段階に入っている。実用化の目標は25年。ビニールハウスなど施設内での活用から始める構えだ。
これまで「害虫は駆除すべし」という考えが一般的だったが、実は殺虫による生態系への影響について懸念する声もあり、世界的に見直しが進んでいる。そうした背景をもとに注目が高まるのが、害虫を殺さず、作物から遠ざける技術だ。農研機構では、超音波を使った害虫防除装置の受注生産を21年に開始した。夜に活動する夜蛾類が嫌う超音波のパルスをスピーカーから発することで、害虫を作物に近づけなくし、害虫が作物に産み付ける卵の数や幼虫を劇的に減らすことができる。
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