2022年12月2日発売の「日経トレンディ2023年1月号」 ▼Amazonで購入する では、「2023-2030大予測」を特集。急速冷凍を可能にした特殊冷凍技術の中で注目なのは、進化した空気凍結。デイブレイクの「アートロックフリーザー」は、マイナス35度以下の冷気で食材を包み込むように冷やす。冷凍ムラが起きず、冷凍に不向きとされてきた食品に使えるのもメリットだ。

※日経トレンディ2023年1月号より。詳しくは本誌参照

デイブレイクの「アートロックフリーザー」。冷凍前のレシピ、調理、解凍方法なども研究し、提案する
デイブレイクの「アートロックフリーザー」。冷凍前のレシピ、調理、解凍方法なども研究し、提案する
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 冷凍は食材の鮮度を保つ技術だが、解凍して食べてみると、本来の味わいや食感が失われていることも多い。通常の冷凍の場合、食材中の水分が氷に変わるマイナス1〜マイナス5度の温度帯をゆっくりと遷移する過程で、氷の結晶が肥大化し、細胞を破壊してしまうからだ。これに対し、急速冷凍を可能にした特殊冷凍技術は、素早く温度を下げることで氷の結晶を小さく抑えられる。細胞を壊さず、うまみ成分の流出や食感の変化を最小限にできるのだ。

 特殊冷凍の中でも新機軸として注目なのは、進化した空気凍結だ。従来は1方向から冷気を与えるだけだったが、2021年10月に発売されたデイブレイクの「アートロックフリーザー」は、ファンの枚数を増やした独自開発のシステムにより、マイナス35度以下の冷気で食材を包み込むように冷やす。食材全体を効率的に凍結できるうえ、置き場所による冷凍ムラも起きないという。

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 これまで冷凍に不向きとされてきた食品にも使えるのもメリットだ。急速冷凍には他に液体凍結という手法もあるが、これは食品を真空パックにする必要がある。その点アートロックフリーザーは庫内に置くだけでいいので、崩れやすい衣を持つ天ぷらなども凍結可能。さらに電子制御冷凍システムを搭載しているので、熱々の料理などもそのまま冷凍できる。汎用性が高く、発売後7カ月で注文台数は200件を達成した。

 急速冷凍することで、食材によっては味が向上するという実証結果もある。CRC食品環境衛生研究所が実施した味覚分析の結果、アートロックフリーザーで冷凍した真鯛を解凍したものは、生の真鯛よりうまみやコクが26.4%向上していると分かった。「あえて冷凍」で、食品をおいしくできる可能性があるのだ。

 しかし、「単に高機能な冷凍機を導入すれば、品質の高い冷凍食品ができるわけではない」とデイブレイク社長の木下昌之氏は語る。シンプルに冷凍や解凍を行う、一般家庭にある冷凍庫の感覚で扱えるわけではない。レシピから前処理、凍結・保管方法、解凍まで、最適なオペレーションを考える必要があるのだ。

 そうした課題に対処できるよう、デイブレイクでは食材やメニューごとに適した冷凍のノウハウを蓄積している。例えば、ロティサリーチキンは調理後のものを冷凍するとどうしてもパサついてしまうのが課題だったが、「低温調理したチキンを凍結し、解凍後に焼き上げることで、ジューシーさと皮がパリッとした仕上がりを実現できた」(木下氏)と語る。風味や甘みは生の状態を保てるものの、冷凍すると食感は再現できないという生野菜や果物は、凍ったままの食感を楽しめるスイーツとしての提供を提案。導入企業へのコンサルも手厚く行っている。

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