野菜や穀物の皮や芯、種などの素材を可能な限り丸ごと使った食品ブランド「ZENB(ゼンブ)」。酢やぽん酢で知られるミツカングループのZENB JAPAN(ゼンブ ジャパン、愛知県半田市)が開発、販売を手掛ける。200年以上もの歴史を持つミツカンが、企業の変革と未来への価値創造を求めて発足させたコーポレートベンチャーだ。そこには、どのようなビジョンがあり、どのような目的があったのか。ZENB JAPAN社長の濱名誠久氏に話を聞きながら、ZENBのビジネスモデルをひもとき、その本質を深掘りする。
酢やぽん酢などのミツカンの製品は、どの家庭にも当たり前のように置かれていることでしょう。そのミツカングループは、江戸時代の1804年、中野又左衛門により酒造業として創業された会社です。酒造後に残る酒かすから酢を作ったところ、これが江戸前寿司に合うということで評判を呼び、庶民に広がっていきました。
1980年代には、家庭での手巻き寿司の普及にも一役買っています。「土曜日は手巻きの日」というコピーのCMを記憶している方も多いのではないでしょうか。「地域の食文化と一緒に成長してきたのが我々のルーツです。商品を売るのではなく、食文化をお客さまとともにつくっていこうという考えが、企業文化として浸透しています」とZENB JAPAN社長の濱名誠久氏は語ります。
実はミツカングループは、海外でも多くの家庭に受け入れられています。英国では、英国料理の定番であるフィッシュアンドチップスを食べる際に使うビネガーやピクルスを作るときのビネガーで最も愛されるブランドとして商品を提供し、米国でも、現地で有名なパスタソースのブランドを展開するなど、今やグローバル企業として成長を遂げているのです。
そんなミツカンが、2019年に立ち上げたブランドが、野菜や穀物の皮や芯、種などの素材を可能な限り丸ごと使った食品ブランド「ZENB(ゼンブ)」です。豆100%でできたヌードルや、野菜のおいしさをそのまま閉じ込めたソースやスープなど、多様な商品を展開しています。このZENBを立ち上げた経緯とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。
「2018年、ミツカンは次年度から始まる中期経営計画に合わせて『ミツカン未来ビジョン宣言』を出しました。10年後の我々のあるべき姿を考えて、その覚悟を示したものです。当時のオーナーと若手役員がチームをつくり、考え抜いた結果出てきたキーワードが『人と社会と地球の健康』というものでした。環境に配慮しながらも、おいしさと健康を一致させる。食に求めるお客さまの価値観も、きっと変わるに違いないと考えたのです」(濱名氏)
これと同時並行で立ち上げたのが「ZENB initiative(ゼンブイニシアチブ)」というコンセプトでした。
「『新しいサステナビリティ』、『新しいおいしさ』、『新しい健康』を目指す『ZENB initiative』というコンセプトをまず打ち出しました。これを実現するために、これまでミツカングループが研究開発してきた技術をすべて棚卸ししてみたところ、有力な技術が見つかり、それを活用して生まれたのが、野菜を丸ごと食べる『ZENB』というブランドです」
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