続・文系マーケターのための統計入門 第4回

マーケティングに関わるビジネスパーソンなら知っておきたい基本的な統計用語の意味や使い方を解説する本特集。今回のテーマは「単回帰分析」。この分析で導き出された「回帰式」を使えば、なぜ、未知なる「売り上げ」や「来客数」「顧客満足度」などが予測できるのか。法政大学経営学部の西川英彦教授による、統計の超初心者向けの講義で学ぶ。

まずは変数が1つの「単回帰分析」で、簡単な予測モデルをつくってみよう ※画像はイメージ(画像提供:nialowwa/Shutterstock.com)
まずは変数が1つの「単回帰分析」で、簡単な予測モデルをつくってみよう ※画像はイメージ(画像提供:nialowwa/Shutterstock.com)

因果関係がなければ回帰分析は使えない

――前回の講義では、回帰分析全体の概要を学びました。基となるデータから結果が「予測」できるという、マーケターにとっては役立つ統計的手法です。

西川英彦教授(以下、西川) 使い勝手のいい分析法ですので、基となるデータ(変数)が1つの「単回帰分析」も、2つ以上の「重回帰分析」も、マーケティングの現場でよく活用されています。

――今回は単回帰分析の具体的な中身についてです。

西川 単回帰分析の解説だけでも、かなり盛りだくさんの内容になるので、まずは「単回帰分析の解説の流れ」を確認しておきましょう。ちなみに、この「解説の流れ」はあくまで講義用です。単回帰分析をマスターした後でマーケターや研究者が実際に行う「手順」とは異なりますので、注意してください。

【単回帰分析の解説の流れ】

(1)1つの原因と結果の仮説を立てる
(2)回帰式「y=ax+b」を導き出す
(3)母集団でも、この原因を使うのが適切かを検定する
(4)回帰式の精度を確かめる

――前の講義の概略の説明も、こんな流れでしたね

西川 では、この「単回帰分析の解説の流れ」に沿って解説しましょう。まずは「(1)1つの原因と結果の仮説を立てる」です。自分が予測したいことについて、何が影響を与えているのか考えて仮説を立ててください。それが決まったら「(2)回帰式『y=ax+b』を導き出す」です。

――単回帰分析を使うと、基となる1つのデータから、知りたい結果がズバリの数値で予測できるのでしたね。

西川 そうです。

――例えば「1日の最高気温がここまで上がったら、ソフトクリームの売り上げはいくらになる」とか「チラシをこれだけ配ったら、イベントにはこんなに来場者が集まる」なども予測できるのですか。

西川 必要なデータがあれば可能です。

――では、「付き合い始めて何年だから、誕生日プレゼントは何千円以上じゃないと喜んでもらえない」とかも分かったりするのでしょうか。

西川 そこまで行くと、どうでしょう(笑)。交際年数とプレゼントの金額の間に「因果関係」があれば、分析できるかもしれませんが……。

――因果関係?

西川 「分析するデータと予測したい事象の間に因果関係があること」が、回帰分析を行うための必須条件です。

――分析するデータと予測したい事象の……因果関係?

西川 はい。その因果関係がどのようなものなのか、仮説を立てて、モデルをつくるところから回帰分析は始まります。ですから、単回帰分析の解説も「(1)1つの原因と結果の仮説を立てる」が最初なのです。

――なぜ、そんなに因果関係が重要なのですか。

西川 ある飲料メーカーの新製品開発を例に説明しましょう。

――お願いします。

散布図を使ってデータの因果関係をあぶり出す

西川 開発担当者は「ドリンクの売り上げを上げるには“味”が大切」と考えたとします。

――おいしくなければ、誰も買わないですからね。

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