
マーケティングに関わるビジネスパーソンなら知っておきたい基本的な統計用語の意味や使い方を解説する本特集。今回のテーマは「回帰分析」。この統計的手法はなぜ、研究分野やビジネスの現場で頻繁に使われるのか。回帰分析はどのようにマーケティングの実務に役立つのか。まずはその全体像をつかむため、法政大学経営学部の西川英彦教授に超初心者でも分かりやすいように解説してもらった。
アイスの売り上げから営業の成約率まで数字で予測
――発展編の講義のトップバッターは「回帰分析」ですね。
西川英彦教授(以下、西川) 回帰分析はマーケティングの現場でも非常に使用頻度の高い統計的手法です。
――回帰分析を使えば、蓄積したデータや調査結果から様々な予測ができるというのですから、マーケターが使いたくなるのも当然だと思います。具体的にはどのような使い方があるのでしょうか。
西川 例えば飲料メーカーの場合だと、新たに開発するドリンクの味の評価によって、売れる本数がどれくらいになるのかが予測できます。あるいは、店舗やイベントでは、当日の気温から来店客や来場者の数字を予測することが可能です。
――つまり、お店の人が「その日の最高気温が30度になったら、売れ筋のアイスクリームが1日でおよそ100本売れる」というふうに予測できるわけですか。
西川 「およそ」ではありません。きっちりと決まった数値で予測します。
――ズバリの数値で?
西川 はい。例えば「最高気温30度なら、あるブランドのアイスが117本売れる」といった感じです。
――そこまで正確にどれくらい売れるかが予測できれば、それに合わせて、店舗側は「いくつ仕入れるか」といった発注の参考になりますし、製造業では生産調整にも生かせますね。
西川 必ずそうなるというわけではなく、あくまでも予測ですが、勘や経験だけに頼るよりは、科学的な根拠に基づいた目安になります。
――売り上げや来店客数が予測できるのは、マーケティングにかなり役立ちます。他にはどんな予測ができるのでしょうか。
西川 営業担当者の1カ月間における顧客企業への訪問回数とそこでの平均滞在時間が、成約率にどれくらい影響するかなど、様々な予測に使えます。
――ということは、例えば「ある営業担当者の月の訪問回数が2回で、訪問先の滞在平均時間が10分なら成約率が11%、訪問回数が5回で、滞在平均時間が25分なら成約率が17%」のような予測結果を出せるということですね。
西川 必要な質と数のサンプルデータがそろっていれば出せますよ。
――そんなことまで予測できるなんて、めちゃくちゃ便利じゃないですか。
西川 だからこそ、マーケティングの現場ではよく使われているのです。
――なぜ、回帰分析は、そこまでズバリの数値で予測できるんですか。
西川 回帰分析によって、基となるデータから予測結果を計算できる式を導き出せるからです。
方程式で計算して具体的な数値を予測
――予測するための方程式がつくれるのですか。
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