元プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の2人が、P&Gで培った知見・経験を基につくる新・東京銘菓。開発時点からリアルタイムに情報を開示していく当連載第5回では、失敗を経て気付いた「ヒットの黄金方程式」をどのように見つけたのか、インサイトを探る方法を解説する。
石井賢介氏 本連載も第5回まできた。前回までの内容に興味があれば、ぜひ読み返してほしい。連載第1回、第2回では、「なぜ東京銘菓に勝機を見いだしたか」について紹介した。第3回、第4回では商品化のめどが立ったものの、「市場調査での大敗北」によって商品の内容を一から見直すことになった理由や、そこからどのような学びを得たのかを恥を忍んで書いた。それらを踏まえた今回の記事では、お菓子市場のインサイトに基づく「黄金方程式」の詳細の説明と、それを見つけるに至ったプロセスを記したい。
俺のフレンチ、「R-1」のヒットに共通すること
まず読者に質問したい。「インサイトとは何か」と聞かれてどう答えるか?
マーケティングに関わる人間は、インサイトという言葉が好きだ。ただ、多くのマーケターが語るインサイトは一貫されていないことが多い。「消費者の声」を指していることもあれば、「ニーズ」や「ウォンツ」と同様の使われ方をすることもある。
私が定義するインサイトとは、「消費者自身でも知らない/気付いていないような、重要な真実」である。時にそれは消費者の深層心理であったり、またある時はそれが新たに明らかになった科学的事実であったりもする。
例えば、俺の(東京・中央)が経営する飲食チェーンの「俺のフレンチ」。フレンチという高級食材を扱いながら、立食というスタイルをとったことでリーズナブルな価格を実現し、一躍人気になった。なぜ俺のフレンチは、消費者の支持を得たのか? 私は、「実は多くの人は高級フレンチの料理を食べたいだけで、堅苦しい雰囲気やマナーは別に必要ない」という深層心理をうまく捉えたことにあると考えている。
また明治は、乳酸菌飲料の「R-1」において、「乳酸菌1073R-1株を使用したヨーグルトのヒト試験」を行い、「風邪罹患(りかん)リスクの低下が認められた」という結果を明らかにした。日ごろから乳酸菌飲料を飲み、腸内環境を整えることは体調管理につながる――。この気づきを消費者に与えたことで、R-1はヒットしたのだ。
俺のフレンチ、R-1のどちらも、「消費者自身も知らない、もしくは気付いていないような重要な真実」、つまりはインサイトを基にしたことでヒットした好事例だ。
お菓子市場におけるインサイトとは?
では、私たちが取り組んでいるお菓子市場におけるインサイトに置き換えたとき、それは何になるのか? 今からそれをひもといていきたいと思う。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー